chuka's diary

万国の本の虫よ、団結せよ!

『クレージーリッチ!』:ハリウッド製中国映画!?

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英語のオリジナル・タイトル、‟Crazy Rich Asians” が『クレージーリッチ!』に変えられた!なぜ『アジアン』がカットされたのか?ナゾです。
レイチェル・チューとニック・ヤングはNY在住のアラサーの中国系インテリカップル。レイチェルはNYで経済学の大学教授をしている。彼女の専門はゲーム・セオリー。つまりポーカーやブリッジなどのカード・ゲームの勝ち方の研究。相手のニックは同僚の大学教授。二人は物価高のNYで一年以上もデートを続け地味だが満ち足りた日々を過ごしていた。
 
ところが親友の結婚式があるのでニックは故郷のシンガポールにレイチェルを連れ帰り、正式に家族に紹介したい、と言い出したところから、ストーリーはスタート。
レイチェルはタイガーママ(= 中国版教育ママ) に育てられ、博士号という最高学歴を成就した典型的な中国系インテリのステレオタイプ。一方のニックは、それまで隠してきたのだが実は、シンガポールを拠点とする華僑コングロマリットの御曹司。これも韓ドラや中ドラでお馴染みの、イケメン主人公は「財閥息子」、というステレオタイプの忠実な踏襲。そしてお決まりの‟コワーいお母さん”が登場し、愛息子の結婚妨害に出るというアジアドラマの定本ストーリー。
 
この映画でもニックの母はレイチェルと二人きりになったタイミングを捉まえ、あんたは息子の嫁にはふさわしくない、と宣戦布告。鬼になった彼女の顔のコワいこと!
しかしレイチェルはバナナ、皮は黄色だが中身は白いアメリカ人。
 
>ニックの母は私とチキンゲームをするつもりよ。私がチキンで、近寄れば私が臆病なチキンのようにパタパタ逃げ回ると思ってるのよ。
ラッパーのオークワフィーナが演じるシンガポールで再会したレイチェルの大学時代のルームメイトは
>逃げ回ってばかりいないで、立ち上がらなくちゃダメ!
と、全くC調な返事
>そうよね、『パックパック(とチキンの鳴き声をまね)、ビッチ!(Bitch! You die!=死ね!)』と言い返してやるわ!
> それはちょっとやり過ぎじゃない?
 
という、上の2人の軽妙なやり取りは上のトレイラーにも入っているのだが、日本語字幕ではフィルターリングされてスッポリ抜け落ちている。まさかこの映画全体がこの調子とは思いたくないのだが。
 
日本公開は来月の中頃なので、ストーリーにはこれ以上深くつっこまないことにするが、この映画のクライマックスは、レイチェルがニックの鬼母とマージャンで勝負するシーンだと思う。そこでレイチェルは鬼母に最期の捨て台詞を投げつける。それは米文化の価値観=個人の幸せの追求、と華僑アジア文化の価値観のクラッシュのように思える。彼女のこの言葉を聞くためにこの映画はあるようなもの、というのが拙者の感想。
 
しかしこの映画は公開前から、いろいろ物議をかもし出している。
主人公のイケメン御曹司を演じているのはマレーシアのTVショー・ホストで英国系マレーシア人のヘンリー・ゴールディング。つまりハーフで、中国系とは程遠い。原作となった小説ではニック・ヤングはオックスフォードで学位を得たことになっているので、特にブリティッシュを話す紳士的イメージのアジア系が必要だったようだ。彼は新婚旅行中に突然監督から電話され、人生一度のチャンス到来というので新婚旅行はそっちのけでオーデションに応じたそうだ。
そうすると、女主人公の方はどうしても中国系にならざるを得ない。だから主役志望の韓国系女優から、主人公は中国系でなければならないのか、という苦情がツィートされて炎上。
そして上映されれば地元シンガポールの華僑英語であるシングリッシュが話されていない、とか、シンガポールのインド系は当地の支配階級の中国系の召使役か、とか予想もしなかった批判がいろいろ出てきた。
 
とにかく大金を使っただけあって映画シーンのかなりの部分が豪華なパーティーと中国料理の見せ場となっている。だからストーリーはさておき見た後も決して損した気分にはならないはずだ。
実は原作小説は3部作で、米でのヒットで続編がすでに予定されたとか。先が楽しみだ。