chuka's diary

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カバノー最高裁判事候補:ドラマキング V.#Me Too

 

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カバノー最高裁判事候補:米国人にもはあるという証拠!?

 
前回では、テニスの女王様ことセリーナ・ウィリアムスのあっぱれなドラマクイーンぶりが大阪ナオミからスポットライトをすっかり奪ってしまったことを書いた。おかげで本物のUSオープン女王ナオミは脇役を演じるはめに。この全くアンフェアな扱いを受けたナオミに皆の同情が集中したのも当然のこと。
 
しかしそれもつかぬ間、今度は『ドラマキング』の登場だ。 エリート中のエリート、有名私立進学校からイェール大、辣腕検事、連邦判事、という輝かしい司法キャリアと家族中心主義を見事両立させているイケメン最高裁判事候補のブレット・カバノー。
ところがである、まるで白馬の王子様中年版みたいなカバノー候補は、昨日の上院司法委員会公聴会最終日の実況中継で、この二週間というもの彼と家族は地獄に落とされている、これまで苦労して築き上げたキャリアは今や破滅寸前、とボロボロ涙で訴え、返す刀で、どれもこれもすべて民主党と左翼の陰謀、クリントンとソロスの復讐だ、と叫んで怒りをぶちまけた。
彼のお涙頂戴の怒れる白人中年男の名演技は一時的にせよ聴衆の涙をさそった。
彼の前に登場し、カバノー候補に36年前!のティーン・パーティーでレイプされそうになったと証言したフォード教授を圧倒したかのように見えたのだが・・・・?
 
私は昨日のこのカバノー米最高裁判事候補の上院公聴会中継をCNNで見た。朝の11時から3時頃までかかった。
カバノー連邦判事はこの公聴会を『サーカス』だ、と手厳しく批判したが、全くその通り。だからそれなりに面白かった。
日本ではカバノー判事についてはなぜかあまり報道されていない。しかし米国内では当日多く人がTVに釘付け。おかげで昨日はレイプ・ホットラインの利用者は200%増大(CNN)だそうだ。
 
米の最高裁判事は終身雇用で、まず大統領が指名し、上院の司法委員会で質疑応答を受け、委員による投票が行われ、結果が上院に送られ上院で議員の多数決投票で決定される。大統領が民主ならばリベラル、共和なら保守的傾向の判事が指名される傾向がある。今回のカバノー判事は超保守と見なされている。だから民主党は一致して反対している。何も際立って珍しいことではない。
 
米市民にとってはこの公聴会はジョブ・インタビューと見なされている。
最高裁判事には法の良心を象徴する高潔な人格が要求されるのだが、カバノー候補はこの高いハードルをクリアできるのかどうかが、目下のイシューとなっている。
一般のジョブインタビューと違い、上院での証言ということで、冒頭で証言内容はすべて真実である、という宣誓を要求される。だから虚偽の供述をすると偽証罪(犯罪)に問われる可能性が無きにしも非ずだが、ジョブインタビューで自己の能力を実際以上に誇張するのは当たり前だし若気の至り的過去なども大目に見るべきなのだが、政治が絡むとそうはいかないようだ。
 
このカバノー候補(現連邦判事)は名門カトリック系ハイスクールからイェール大学へ進学したいわゆるエリート。しかし学生時代は凄いボンボンだっただったようだ。
そういった彼のハイスクール時の悪行を地元の上院議員に手紙で報告した人が出た。この地元の上院議員とは民主党の大物、#MeTooの支持者でもあるフェンスタイン女史。
この手紙を出した当人も首都DCの名門私立女子高校卒業、ここはクリントン令嬢やオバマ・シスターズも通ったところだ。
手紙内容によると当時17歳のカバノー少年はホームパーティーでぐでんぐでんに酔っぱらい、当時15歳だったこの女性をベッドの上に押し倒し、羽交い締めして強姦しようとしたという。カバノー少年の悪友同級生のボンボンが一緒にいた。この男はカバノー判事のレイプに同乗しようとしてその上からおっかぶさったようだ。 しかし勢いがつき過ぎて二人ともどもベッドから転げ落ちてしまい、被害者は脱兎のごとく部屋から飛び出し、そのまま家まで逃げ帰った、というのだ。
この女性はある有名大の臨床心理学教授なのだが、このレイプ事件が36年後の今日に至るまでトラウマとなって尾を引いている、と証言している。
 
ところで米国人の中にはもう一つの有名なセクハラ公聴会を憶えている人も多い。
1991年の トーマス現最高裁判事 V. アニタ・ヒル、である。確か夜中過ぎに終了したこの実況中継を私も見た。
ブッシュ保守政権下EEOC長官だったクラレンス・トーマスの補佐官であったアニタ・ヒルの証言によれば、トーマス候補は、君とはデートするやくそくだったよね、とか、コーラのカップを目でさして、あ、陰毛が入っている、とかいうセクハラ言動を彼女に繰り返したそうだ。
アニタ・ヒルはこのことをFBIによるトーマス判事の身元調査で強制的に告発させられた。もちろん極秘情報であったが、なぜかそれか反対派に漏れてしまった。そして上院公聴会に強制的に呼び出された。
アニタヒル弁護士はもうこれ以上の質疑は必要ない、噓発見器テストをパスした、という理由で公聴会を中途退場。
今回と同様にアニタヒル証言の後、トーマス候補が呼ばれた。かなり怒った表情で、この件は、上昇志向の黒んぼにたいするハイテック・リンチだ、と述べたのが印象的だった。
しかしそれ以外は彼は淡々とした口調でアニタヒル証言をすべて否定し、質疑もそれ以上は進むことはなかった。
このセクハラ公聴会にはアニタヒルとクラレンストーマスの当事者以外に両者のキャラクターをバックアップする26人が査問され証言した。その中にはセクハラを確証する証人は一人も含まれていなかった。(セクハラをされた、という女性がいたのだが、呼ばれなかった)
結局クラレンス・トーマスは最高裁判事に上院で任命されたのだが、これには思いがけないドンデン返しが待っていた。
1993年、‟The Real Anita Hill” (アニタヒルの真実) が大ベストセラーになった。著者は若手の保守ジャーナリスト、David Block.。この本はアニタヒルの動機を暴露した、となっていた。保守陣営からは絶賛され、私も読んだ。よくリサーチされているようで説得力があったが、ちょっとうまく出来過ぎていないか?というのがその時の私の率直な感想だった。ところがである、2000年を前にして、著者は自分がゲイであることを公表、この本も事実にもとずかないでっちあげ、でアニタヒルに謝罪をしてしまったのだ。ゲイは保守陣営では受け入れられていない。著者自身はあっという間に右から左に鞍替えで、今日彼は民主党の著名な戦略家である。一方、アニタヒルは米メディアの寵児になっている。セクハラ問題が起こる都度、闘う女のシンボルとしてメディアは常にコメントを求めている。
 
この1991年のアニタヒル公聴会の影響は大きい。
1991年の公聴会では、全員男性で検事や弁護士上がりの共和党司法委員が直接アニタヒルに質問をしたのだが、彼らの言い方が意地悪過ぎる、アニタヒルを犯罪人のように扱った、と散々に批判された。
だから今回は、共和党側は、女性検事を雇って彼女にソフト口調で質問させるのみ。今回の公聴会では共和党委員は皆口をそろえてフォード教授の勇気をたたえ、彼女の証言を信用する、とまで言っている。だが彼女には確証がないのでカバノー候補に投票する、というのだから、一体どうなっているのか?これらの議員達は一般市民にはわけがわからない理屈を平然と言ってのけるのだ。これには皆呆れ果てている。
 
 
上は日本の報道です。ケントギルバート、初めて聞きましたが物凄い三流ジャーナリストぶり!
彼自身が無知なのか、日本人が知らなさすぎるか?
 
今全米でお笑いの対象になっているのは、お涙頂戴スピーチの後のカバノー氏の異様な応答ぶりです。長くなりましたので、これ、次回に持ち越します。