chuka's diary

万国の本の虫よ、団結せよ!

トランプのアメリカ:壁か?壁抜きか?

このところアメリカではトランプをめぐる新情報が毎日続出し、ついていくのも一苦労。
 
この2月5日(日本時間では6日)にやっと‟State of the Union”、略してSOTUS、の大統領演説会が開催された。日本では米大統領の年頭教書演説と訳されている。これは憲法で規定されていない単なる恒例行事である。一月中に最高裁判事、上・下院全議員、大統領と、米の民主三権のトップ全員が出揃ったところで大統領が政策方針と結果を報告する。いわば新年恒例の大統領様ヨイショの会。しかし今回はかなり様子が違った。
 
この‟SOTUS19”は例年通り一月に予定されていたのだが、政府閉鎖を断行したトランプに対して下院議長のペローシ女史が閉鎖解除後にしてくれと下院開催を突っぱねたといういきさつがあった。34日間続いた連邦政府閉鎖は1月26日に解除となったものの、来る2月15日の期限切れには再び政府閉鎖か?それとも国家緊急事態宣言か?という予想が飛び交っている。理由は民主党のペローシ議長がトランプとの交渉に応じないからだ。
 
2016年のトランプキャンペーンの有名なスローガンは
‟Build A  Wall” 壁を建てろ
‟Make Mexico Pay For  It” メキシコに費用を払わせろ 
 
選挙運動ではこれをトランプと支援者達が大声で一斉に連呼。
 
ところがトランプの最初の2年間は上院下院も共和党が握っていたのにも関わらず、共和党はトランプの要求を受け付けなかった。しかし下院が民主党の手に渡ると、トランプは一夜のうちに豹変。費用を米市民の血税から払えと要求。それが原因でフェイクニュース+民主党連合に集中攻撃を受けている。
今回トランプはスピーチで国家緊急事態宣言を出すのではないか、という予測も流れたが、そうはならなかった。
 
トランプの演説の前日、トランプの過去3か月間の公務録がメディアにリークされた。それによると、トランプの公務時間の約65%はTVニュースとツイートに費やされているという。トランプのフォックスニュースへの執心ぶりはすでによく知られている。これでトランプの大統領としての能力に対する不信感がますます高まった。このリークはタイミングからして誰かがしかけた前哨戦である。
 
まず今回の演説の冒頭で、トランプは民主・共和が協力し、一つに団結して外交問題に当たることの重要性を強調。そこまではいいのだが、返す刀で、国内の戦争や大統領を捜査するのはもっての他だ、と切り返したところはやはりトランプだ。
 
壁は絶対建てる!今も次のキャラバンがアメリカに向かって押し寄せているのだ。これは国家の非常事態だ。国境の州の治安を守れ!人殺し、レイピスト、麻薬密売人、人身売買から米住民を守れ!壁さえできればこの問題はすべて解決する。
 
ここで共和党議員は立ち上がり拍手喝采。民主党側は沈黙で応答。
国の一致団結を強調した舌の根も乾かない内に、とはこのことだ。
 
トランプはこの日の数日前から陸軍兵3500人を再びメキシコ国境に派遣。もちろん非常事態に箔をつけるのが目的だ。
この日の演説には不法移民に殺された犠牲者の家族がゲストとして招待されていた。
 
トランプが一言も触れなかったのは、政府閉鎖で給料が遅配になった連邦職員80万人の苦労だ。それだけではない。今日、多くの人々が雇用エージェンシーを通してパートとして政府で働いている。たとえばTVに出ていたスミソニアン博物館の警備員。それらのパートには給料は出ない。クリスマスから正月までのホリデーシーズンを当てにしていた役所近辺のレストランは儲けなし。政府閉鎖で被害を被った勤労階級に対する配慮が全くない、これがトランプの真実である。こんな男がどうして白人没落中産階級の代弁者なのか?不思議に思わざるを得ない。
 
トランプの演説中に起こった面白い出来事は、女性選挙権運動の旗色であった白色を着込んだ下院の女性議員が、去年創出された職数の58%は女性が得た、というトランプの報告に一斉に立ち上がり、躍り上がって拍手喝采をしたこと。下はそのフォト。
 
 
Image result for state of union 2019
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
トランプも一瞬とまどって茫然としたが、最年少で最左翼のオカシオ・コルテス議員と一緒の二人のムスリム女性議員の方に向かって、こういうことすべきじゃないんじゃないの、とあきれ顔で壇上から呼び掛けた。
 
もう一つは翌日になってネットで大拡散したトランプの演説中に眠り込んだ少年。
 
 
Boy named Trump who fell asleep during State of the Union hailed a hero 

 
この少年はジョシュア・トランプ君(11歳)でトランプと同名ゆえに学校でいじめにあったそうだ。それで今回の招待となった。無理もない、この演説が始まったのが午後9時過ぎ。ジョシュア君のベッドタイムはもうとっくに過ぎていた。
その横でメラニア夫人とお行儀よく座っていたのはグレース・エリン(9歳)ちゃん。この少女は脳腫瘍にかかり、やっと投薬治療を終えたところだそうだ。
治療は一応成功したということだが、ぜひこれからも元気で素晴らしい未来を満喫して欲しい。