chuka's diary

万国の本の虫よ、団結せよ!

トランプのアメリカ:質問に応えます#3

今回の政治的任命者に関して、一つだけ質問させてください。もし、次期政権で首になるのなら、日本の高級官僚のように、長期的に給与支払いの保障はありません。そのような仕事が成立するのは、給与が非常に高いからでしょうか、それとも彼ら政治的任用者は別に職業(弁護士のような)を持っているからなのでしょうか
 
まず、連邦政府職員について簡単に説明させて下さい。雇用先がどの省か、どの政府団体であるかによって多少違いがあります。下は基本線の説明ですから現実とはかなりそれている可能性もあります。
 
連邦政府雇用人は約800万人といわれています。基本条件は米国籍であること、英語の読み書きができることです。
採用は公開で、全職務はGS1からGS15のランクに分かれています。このランクは給料額と学歴に基ずいたものです。GSランク内の給料はさらに10ステップに分かれています。民間は実力主義ですが、国家公務員は学歴・資格社会です。
 
GS1(最下位ランクで高卒までいかない、つまり無教育)のステップ1が最低の年俸で、$18,785=約207万円.。税金込みです。これは法的最低賃金。マクドに働くのと同じです。
GS2は高卒でほんの少し給料がいい程度です。
GS5が大卒だと思います、ついて修士号、博士号となります。
GS15(最高位で、弁護士資格などの博士号同等)のステップ10が最高の年俸で$132,122=約1453万、各税金で少なくとも25%ぐらいひかれる、ということになります。
しかし医師や研究者などの資格・業績等を要する職務は別格の雇用ランクがあり民間の平均給与に近い約2000万円から3000万円前後が年俸として払われています。
 
上からもお分かりのように、東大卒では大卒資格で十年以上勤務してせいぜい課長どまり。年収も約1000万円前後で打ち止めになります。修士号で民間経験のある人が部長・課長に応募すれば、後者が有利となります。多くの部署では民間から応募してきた候補を好む傾向があるのも事実です。だから日本や他の国のようなキャリア官僚制度はないです。連邦政府職員が昇進したければ上の学歴や資格を得て、上位のGSの空きを探す、ということになります。こうして昇進している人も多いです。
Political Appointee、政治的任命者は大統領や長官によって任命さる上層部官僚です。省庁ではトップから#1、#2、#3ぐらいまでの候補者は議会の質疑を受け承認される事が必要です。
この内、政治をキャリアにしている党関係者はほぼ全員が弁護士資格をもっている人のようです。それ以外は軍高官、金融ビジネスのCEO、学術研究者、選挙で功労のあった現職議員等々。この人達は公職から民間に戻ってもキャリアに箔がついて得することになっているのですが、中には偽証、汚職等で訴追され、社会的地位を失う人も出ています。
 
政治的任命の各省長官は年俸は最高が$210,706(税金込)かそれ以下。
大統領の年俸は$400,000(税金込)。
大統領にはホワイトハウス、エアホースワン、キャンプデビッド別荘などのパーク(補助=おまけ)がついているので、彼の給料はいわば小使い。トランプは全額慈善団体に寄付。さすが金持ちと思いたいところだが、拙者は国税申告書を米市民に隠したいのが真の理由だと思っている。近々下院がトランプの国税申告書のコピーを要求することになっている。
各議員の年俸は$174,000。
 
質問でご指摘されたように、米国の議員はほとんどが弁護士のライセンスを所持している。議員の主要な職務は新法案の審議であるから当然だ。ケネディ、ニクソン、クリントンは弁護士だった。しかし悪事がバレたニクソンは弾劾される前に辞職、クリントンは弾劾は否決されたが、偽証が原因で地元アーカンソー州で弁護士資格を一生剥奪されている。
 
主要IT産業の新入社員の年俸が800万円前後であることを考慮すると、いかに上級連邦職員の給料が低いかお分かりだろう。だから米国では有能な人材はまず民間をめざすことになっている。
そのせいで国家公務員の回転率は大きい。しかし経験・実力を重視する民間も回転率が大きいので民間と公務員を行ったり来たりする人が一般的だ。
国家公務員一般は20年でリタイヤできます。しかしその支給額は勤務年数に基ずいている。総計20年間つとめれば20%の給料となるから、30年選手、とか40年選手という人もいる。62歳に達すれば一応年金が出るので年取って民間から移って来るケースも多い。
 
政治的任命の政府高官を皮肉る有名なことばに、❝リボルビング・ドア=回転ドア❞、というのがある。
大統領が他党にかわれば当然民間に戻るが、政府要職時代の経験やコネを売り物にして金を稼ぐ。
再び自党の大統領になると、また上級公務員に戻る、という人がいる。ブッシュの副大統領チェイニーなどはその典型だそうだ。