chuka's diary

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エイプリルフールの新元号、❝令和❞!?

4月1日、新元号、❝令和❞ がアベ政権によって公表。今年のエイプリルフールにふさわしいネタとなった。安倍政権側は従来のように中国古典からではなく万葉集からピックアップした漢字の組み合わせだから史上初の国風だと自画自賛。もちろんその根底には中韓を何とかして踏みにじろうというノスタルジアに満ちた戦前回帰願望がある。
拙ブログで戦時下の敵国・米側から見た日本文化をトピックにした。文化はある民族・地域に広く共有される風俗・習慣と一般的には解されているが、文化の各要素のほとんどが伝播され、時代に応じてさらに地域化したもの、と想定されている。進んだ文化を摂取する事はグループの生存がかかっていた。日本文化というのも同じだ。外来文化摂取と醸成のリピートだ。
歴史的には日本も朝鮮半島も固有の文字はなかったとされている。古代中国からの漢字を習得し、中国文化及び政治体制を習得する事が支配層エリートの仕事だった。中国語は今日の英語と同じ。当時も中国語ペラペラというわけにはいかないので、中国語をそのまま器用に解読したのが半島と日本の知識人だった。たとえば古代日本では唐の均田制とか律令制がそのまま取り入れられた。それは戦後民主主義と同じだ。しかしどこかがオリジナルとは違う。こういう事態は外来文化の特徴であって日本に限ったことではない。むしろ問題はこのような歴史的現象を誤解し理解できない政治家が大手を振って歩いているという日本の現状だ。妄想がかった自説を都合よく政治に利用する。今回のエイプリルフール新元号もその典型かと思われる。
この新元号のセールスポイントこれまでの中国古典からでなく、万葉集という国産の古典から取られた、と安倍政権は誇り高々だが、すぐにメディアによってこれは甚だ疑わしいことであるのがバレた。これを見ても安倍政権がいかに皮相的であるかお分かりだろう。
下は朝日新聞からのコピペだが、辰巳氏は万葉集専門家、水上氏は中国古典専門家だそうだ。
辰巳正明:大宰帥(だざいのそつ、長官)の大伴旅人(おおとものたびと)が、天平2(730)年に、梅花の宴という宴会を開いた。そこで、大宰府の役人たちが集まって、梅花の歌、32首が読み上げられた。その時の漢文で書かれた「序文」から採られている。
 ――どんな意味でしょうか。
 辰巳:「初春令月、気淑風和」。「初春のこの良い月に、気は良く風はやわらか」という意味だ。春の訪れを喜び、みんなが和やかに歌を詠んで楽しむ。採り出した漢字だけに着目すれば、「和しむべし」「みんなで仲良くしましょう」という意味にもなる。
上の万葉集の漢文(中国語)は明らかに有名な中国の詩を踏まえて書かれている。
水上:確かに、万葉集より古い中国古典詩文集の「文選(もんぜん)」に収録されている、張衡(ちょうこう)の帰田賦に「於是仲春令月、時和気清」がある。ここにおいて仲春の令月、時和して気清しと。
以上、今風に言えば上の大伴旅人の漢文序文の関係個所はどこから引用したのか明らかにされていないので、プラジアリズムに相当する。つまり剽窃である。しかし同時代の貴族達は引用などされなくとも出典先を知っていた。当時のインテリ貴族の楽しみは特権的教養を仲間ウチで共有することでもあった。そういう楽しみ方をしていたのだ。
ここで拙者は拙高校教科書に載っていた、枕草子の香炉峰の雪の一節を思い出してしまう。これは皇后定子に仕えた清少納言がいかに才女であったかという話である。雪の日に、「少納言よ。香炉峰のいかならむ?」
と定子が女官達に問いかけると、清少納言は何も言わずに召使に格子を開けさせて御簾を上げさせ、外の雪景色を見せた。
これは中国の白居易の有名な詩の一節を踏まえたもので、定子皇后もいたく感激した、というたわいもない自慢話だが、驚くべきことは、このように、中国の詩は当時の貴族の教養のベースであったという事である。だから下流貴族出身の清少納言から最上流の定子皇后に至るまで女性ながらもこれらの人達は凄い教養の持ち主であることが理解できる。
皇后定子は藤原道長の姪で一条帝に寵愛されたにも関わらず父の突然の死で一族の長となった道長に定子の家族は傍流に追いやられて失意のうちに死ぬ、という悲劇の人でもあった。だから枕草紙にかなりの恨を感じる読者も多い。
上からも明らかなように、❝令和❞が国風だという主張ははなはだ疑わしい。メイド・イン・中国の方が真相だ。
覚えているだろうか?❝The Facts❞というワシントンポスト紙に出した安倍支持派の政治広告を。2007年の事件だが、慰安婦は韓国被害者のウソで彼女らは日本軍相手に商売する売春婦、だと宣言。これによって日本に謝罪を求める決議が米国下院外交委員会で一挙に可決になってしまった。それでも懲りずに2012年には米国最初の慰安婦記念碑の地となったパリセーズパークのあるニュージャージー州の地方新聞に同じ政治宣伝広告を再び出した。中でも支援者の一人、安倍晋三の名は特に目立った。この嫌がらせが韓国及び在米市民団体対安倍政権の慰安婦像設立泥仕合にまで発展し、今日にまで小競り合いが続いている。この慰安婦像設紛争については異様な国際外交紛争として注目されている。戦時下の米軍教育映画、Know Your Enemy、では、口ではアジアの平和を唱えながら実際は侵略した二枚舌の日本、となっていたが、戦前回帰志向の安倍政権が平和主義であるとは思われていない。