chuka's diary

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トランプのアメリカ:モラーレポートが公開された!?

4月18日、ロシアによるの大統領選介入事件の捜査に当たったモラー特別検察官による『モラーレポート』が予定通り米司法省から一般公開された。公開は司法長官バー氏の報道記者会見の後に予定され、その前にCD-ROMで公開されるというのが流れ、今時これを使う人がいるのか?という苦笑がでた。結局このレポートはネットで直接公開された。
 
しかし前哨戦が凄かった。まず民主党が実権を握る下院監視委員会はバーの能書きは不必要、と前夜に記者会見を止めろ、と公式に要求した。というのは、絶対多数の法曹系コメンテーターは、司法省内部メモによって、司法省が現職大統領を犯罪容疑で起訴することを禁止していることを理由に、モラー特別検察官は報告書を議会と市民に向けて書いた、結論ずけたからだ。
 
以前説明したように、政府高官の政治的任命というものが悪用されるとどういう結果を招くか、今回のバー長官のモラーレポート公開阻止行為はそのいい例だ。
 
モラー捜査は2017年の5月、トランプが大統領に就任して4カ月後、当時FBI長官だったコミー氏を不意打ちして突然クビにしたことから、臨時代理長官となったマケイブ氏が司法省にかけあって特別検察官モラー氏を任命させたことから始まった。政府とは独立して、トランプ及びその身辺を徹底的に捜査しロシア大統領選介入のトランプ側の動きとの関連性を解明する目的だった。だから、これは最初から大統領をターゲットとした捜査であり、トランプが執拗にツィートしている‟魔女狩り”だ、というのも当たらずとも遠からず。これが公平な視点だと私は思う。
 
モラー捜査官は総勢40人以上のスタッフを雇い、2800件の召喚命令を出し、証人500人を直接インタビューし、約500件の捜査令状を取り、13国に接触した。捜査過程で34人と3つの組織が起訴された。その中には民主党本部をハッキングしたロシア陸軍諜報部のメンバーも含まれている。しかし、親玉プーチンは起訴から外されている。
 
公開されたモラーレポートはレインボーレポートにはならなかった。黒塗りされた部分に理由についてカラーコードがチョコンと付いている、というしろもの。しかし448ページもあり、プリントしたものは高さ3インチぐらいか、TVではファイルにされていたが、ずっしりと重そうだった。
 
このモラーレポートに先立つもう一つのレポートがある。これは‟スティールドシエ”と呼ばれている。民主党のEメールが盗まれたとわかった直後に民主党が元英国諜報員で私的調査機関を運営していたスティール氏に依頼し調査を行った。ドシエという聞きなれない英語はフランス語で探偵録を意味する。このレポートはトランプ就任前後に関係者に出回り、FBI捜査の根底になった。だからトランプは犯罪者ヒラリーの陰謀と見ている。その中にはトランプがミス・アメリカ世界大会でモスクワ滞在中にロシア側に売春婦の目の前でおしっこした場面(=Golden Shower)の隠しビデオを撮られ、脅迫を受けている、というがあった。その件に関してもモラーレポートは触れている。トランプはこのビデオの存在を早くから知っていたが、問題のビデオが本当に存在するのかどうか、モラー捜査では確定できなかった。
 
 
もっとも黒塗りの部分が多いのは、ロシアと大統領側の共謀容疑関連のパートである。
とにかくモラーレポートの内容は詳細で、これまで報道されていた多くの謎の点がをモラー氏によってはうまく線で繋げられている、という評価だ。
モラー報告書によると、トランプサイドには共謀を構成する要素、特に双方の合意・共有されたプランがない、というのでこの捜査結果では陰謀罪で起訴するに値しない、という結論となっている。
 
もともとこのハッキングは、トランプが選挙運動中にステージで、‟ ロシアよ、どうか極悪人ヒラリーの失なわたEメールを見つけて、公開してくれ”と演技力たっぷりに聴衆に叫んだ事が発端だった。ロシア側は五時間後に民主党本部にサイバーアタックを試みた。その後、ロシア陸軍諜報部は民主党本部のハッキングに本当に成功した。
 
プーチンはクリントン候補に恨みがあるらしく、クリントンが大統領になるのを阻止したかった、そして米ロ関係の向上を狙っていた。具体的には経済サンクションの廃止とオリガルヒを使っての米での金儲けである。トランプはモスクワにトランプタワーを建てたくて頭が一杯だったから、彼の大統領候補はロシアにとって絶好の機会となった。
多くが黒塗りされているので詳細は明らかでないが、ロシアとトランプ側はかなりの回数でコンタクトしていた。起訴されたフリン元国家安全保障長官は長官に任命される前にトランプの手下としてサンクション緩和についてロシアとコンタクトしていた。フリン氏は海兵隊を退役した後は金儲けに専念、外国から金を受け取りながら、税金申告は勝手にスルー。外国のロビーストである登録もしていなかった。理由はグリード(強欲)である。
 
だから、フリンはモラー氏より捜査協力により減刑嘆願も得たが、昨年刑を決める判事から、あなたの罪は国家反逆罪、と指摘され、刑期決定が延期された。フリン氏は退役海兵隊大将なのだ。一体どの顔下げて合衆国と自由を守る為に危険覚悟で闘ってくれ、というつもりか?
 
しかし、トランプ側は嘘と違法な捜査妨害でモラー捜査に敵対だ。
たとえば、大統領報道官のサラ・サンダース。
FBIのロシア介入の捜査を止めさせないコミ―長官をクビにした事件に際して、FBI内部からたくさんの賛同を得た(つまり現職の大統領捜査に反対している)、コミ―はFBIで人気もなく、仕事のできない人だからクビになった、とTVで散々にけなしたのだが、モラーレポートによれば、これは彼女の全くの作り話と彼女自らが認めた(疑わしい、トランプからだと想定される)。とにかくこういう人が大統領報道官として白昼堂々とウソの中傷をまき散らしたということになる。
 
 
昨日はTVで一日中モラーレポートの解釈を法曹コメンテーター達がしていた。今日はグッドフライデーでこれから3日間米はイースターホリデーに入り、学校は今日は休校。バー司法長官はこの祝日連休を狙ってレポートを公開し市民の矛先をそらすのが目的、という非難がフェイクニュース側から流れていたが、モラーレポートを読むには少なくとも2日はかかるそうで、今日は皆休みを利用して読んでいる最中だそうだ。結局これはグッドタイミングだったのではないだろうか、と私は思う。
 
昨日のバー氏のモラーレポートの解釈は自説の大統領権限拡大論、つまり背任特別捜査は憲法違反、に沿ったもので、実際のモラーレポートの内容とは反対であることが公開でバレてしまった。
捜査妨害容疑では結論は正反対。しかしトランプ起訴は議会による弾劾か、大統領終了後に民間人として起訴されるのか、選択があることを開示している。
 
NYタイムスの公開前夜の特報は正しく、大統領側はすでにモラーレポートを事前に見ており、40ページぐらいの反論を公開前からすでに用意しているとの事だが、その反論はまだ公表していない。
トランプ氏は冬のホワイトハウス、マー・ラーゴ・ゴルフクラブの別荘で早朝ツイート。
 
Statements are made about me by certain people in the Crazy Mueller Report, in itself written by 18 Angry Democrat Trump Haters, which are fabricated & totally untrue. Watch out for people that take so-called “notes,” when the notes never existed until needed. Because I never....
拙訳:キチガイモラー・レポートの私に関する各人の証言は、実は18人の怒れる民主党トランプ・ヘイター達が書いたもの、捏造されたもので全くのウソ。いわゆる‟ノート”を取っているヤツに気をつけろ、このノートは都合に応じて現れるぞ。・・・
 
というように出来るかぎりトランプ英語のニュアンスに合わせて訳してみたが、モラーレポートで無罪証明された、と宣言している人の書く言葉ではないことは明らか。これを読んでもツィートしている人の頭の中の回線がどこかおかしいとは思わないか?
ノートの部分については明確な意味は不明だが、どうやら、彼がクビにしたコミ―氏などのFBI高官達(コミ―氏はトランプとの対話はすべて直後にノートし、その内容をモラー氏に送った述べている)や、モラーをクビにしろ、とせまったが逆に断られ、こんなバカやってられないと辞職したドン・マゲーン弁護士がノートを取る人達だったところからきているようだ、とNYタイムスは解釈していた。