chuka's diary

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トランプの日本:フリン不起訴事件に至るタイムライン

"トランプのアメリカ"というテーマで好き勝手に書いているうちに日本には熱狂的トランプファン(=trumpers)が多いらしいのに驚かされた。"trumper" という新語はトランプ自身もツィートで頻繁に使っている。日本の"trumpers"には、トランプは彼らの大統領でもあるのだ。

 

そのせいで、日本では"オバマゲート"が大きく取り上げられ、これでトランプ再選は決まった、という政治解説者が多く表れている。

先月、フリン氏起訴取り下げをバー司法長官が裁判所に請求したのだが、それに呼応し

てトランプは、モラー捜査はオバマ氏の陰謀でフリンはFBIに嵌められ嘘を強要された、とツィートやTVで声高々に主張し、オバマゲートを自ら打ち上げた。

だが、この不起訴の請求は担当判事の"待った"で依然として宙ぶらりんのままだ。しかも判事はこの請求を拒否するつもりのようだ。

 

バー司法長官の起訴取り下げ請求に対して、元連邦検事及び裁判長達2000人以上がバー氏の司法長官辞任を要求している。

理由は、バー氏はトランプ大統領の要求通りにフリン氏を特別待遇することで、法の下の平等という米憲法の原則を破った、というのだ。

 

フリン事件は非常に複雑である。下はそのタイムライン。

 

日本の代表的トランパーこと及川幸久氏によればフリン氏は、事実は小説より奇なり、という言葉通りの人だそうだ。

 

まず、フリン氏とロシア疑惑の繋がりについてのタイムラインとナラティブが下です。

 

2016年5月、米民党本部議長ポデスタ氏のe-mailがハッキングされた。後にロシア軍部が犯人とCIAにより結論付けられた。その後、少しずつリークされたが、ウィキーリークスではなかった。

 

2016年10月7日、トランプの"ハリウッドアクセス動画"が公開。これは10年以上前のものだが、トランプは、"ワシのようなセレブになれば女はどんどんプッシーを掴ませてくれるんだ"と豪語、あまりの下品さに国内がショック状態になった。

 

共和党有力議員故マケイン氏を中心に、トランプは大統領候補を辞退せよ、さもなければ共和党候補を取り消すという声が高まった。トランプ陣営の大危機となった。

 だが、この動画公開から30分後に、ウィキーリークスがヒラリーのe-mailを一挙に大量公開。その中にはヒラリーの大きなイメージ・ダウンにつながるものが含まれていた。

 

トランプはTVで一応謝罪し、共和党大統領候補の地位を維持した。

 

 2016年11月、大方の予想に反してトランプは大統領選に勝利した。

 

2016年12月10日、オバマ・トランプ引き継ぎミーテイングでオバマ氏はフリンを閣僚ポストにつけないよう忠告。理由はフリンはプーチン大統領に近い、それに人物に問題があるという2点だった。フリン氏はFBIによる最初のロシア疑惑捜査の対象4人の一人。

憶測として、オバマとフリンの間は険悪であった、というのがある。フリンはオバマ政権によって陸軍を強制退役させられた疑いがあるからだ。美人女性スパイと秘密に交際していた、というのもある。当時、フリンはオバマ政権の国防省情報局長であり、これが本当ならクビは間違いない。事実彼は解任されている。しかし真偽は明らかではない。

 

12月29日、オバマ政権はロシア軍のハッキングに対してロシアに新な経済制裁、ロシアスパイ36人の米退去、関連するロシア政府施設押収等、を課した。

しかしその同日、フリン氏はロシア大使と電話連絡を取り、オバマ政府の制裁についてロシア側と交渉、ロシア側が制裁を受け入れる合意を得た。ロシア側は見返りとしてトランプ政権の制裁解除という約束を得ていた。

しかしロシア大使との電話はロシア疑惑捜査の為FBIに盗聴されていた。

 

なお、文書化された内容は、一週間前にすでに公開された。内容はモラー報告書と同一であり、モラー捜査の正確度の高さを示している。

 

ロシア側の無反応ぶりに驚いたのはオバマ政権だった。過去の制裁にプーチンが黙っている例はない。フリンの電話内容からこの原因が明らかになった。

1月5日のブリーフィングはこの電話に関連しているようだ。オバマゲートを叫ぶトランプ側は、オバマ氏による陰謀会議と主張しているのだが、当時のイェーツ司法長官も単なるブリーフィングであると下院で証言している。

最近オバマゲートの陰謀の証拠としてライス国家安全保障補佐官の自分宛てのe-mailが公開された。それによっても明らかだ。このブリーフィングでロシア疑惑捜査をトランプ政権下で引き続き法に沿って進める、ということをオバマ政権は確認しているのだが、これは慣例、新政権で変わるのは必然だ。ライス長官のe-mailにはこの捜査で得た情報をトランプ政権に伝えることを確認している。しかしロシア疑惑捜査の全情報が最初から伝えられたというのではないようだ。

 

2017年1月13日、トランプの大統領就任の直前に、ワシントンポストの有名なコラムニストが、フリンが制裁発表の当日ロシア大使と会談し、トランプ政権は制裁を廃止する事を通告した、とリークしたので、また大騒動になった。

 

翌14日、日曜日朝のニュース番組でペンス氏は"フリンは制裁の件については話していないと私に報告した"、とTVできっぱり公言した。だが、疑惑はますます深まるばかりだ。

1月23日に、FBIはフリン氏を査問、制裁について交渉したのかどうか質問しフリン氏はしていない、と答えた。それに対してFBIが反論すると、憶えていない、と言った。

 

モラー報告ではフリン氏は自分の意思でFBIの査問に出た、と書かれている。

 

1月26日、イェーツ司法長官代理は、FBIのフリン査問に基ずきフリンの公然の嘘が米国の安全性を脅かす危険がある事をトランプに通告した。しかし、フリンは否定を続け、トランプ政権はフリン側に立ち続けた。

 

2月10日の夜になって突然、フリンが政権を去ったことがホワイトハウスからメディアに報告された。

 

翌2月11日、トランプ政権は副大統領ペンスに嘘をついたという理由でフリン解任を発表。しかし、ボブ・ウッドワードの"Fury"では側近連から解任するようにプレッシャーをかけられ、追い詰められたトランプが報道官に何とかしろ、と言ったことになっている。この報道官はフリンを捕まえて、ホワイトハウスに近ずか無いようにというヒントを与え、フリンはそのまま辞任したことになっている。

 

上のタイムラインから見えて来るのは、トランプ政権内部の対応のまずさだ。フリン氏は婿クシュナー派だった。もしクシュナー一族の天敵、クリスティ元知事がトランプ政権に参加していればこのような不手際は起こらなかったかも知れない。

 

この時点でコミFBI長官はフリン氏を起訴するつもりは無い、とメディアに公表している。このコミ氏を逆恨みから突如解任し、FBI捜査を引き継ぐ形でモラー独立捜査を引き起こしてしまったのは他ならぬトランプ自身なのである。フリン氏はこのモラー氏によって起訴された、という事実を都合よく忘れているのが今のトランプなのだ。