chuka's diary

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朝鮮人強制連行はなかった!?その2

前回、植民地朝鮮での戦時下の徴用・徴兵を分析した"Fighting for the Enemy" (2013)での  朝鮮側のコラボについて触れました。

 

背景には1910-1945の35年に渡る日本の朝鮮支配がある。日本は併合(=植民地化)以来厳しい軍事支配を続けてきた。原因は独立運動及び左派からの叛乱、テロ活動、消極的抵抗が止まなかったからだ。その為にも併合条約で約束したように独特の懐柔政策を取らざるを得なかった。上層エリートや日本の教育制度の恩恵を受けたインテリを官吏に登用、特に警察官の多量採用もその一つだった。これは満州国でも同様だった。朝鮮人が日本支配の手段となったのだ。

 

朝鮮半島の徴用は内地とは一線を画している。

1939-1941の募集だが、これは事業主が労務者に直接コンタクトし契約を取ることである。だが、総督府は半島南部に募集地帯を設置した。これは北部の工業地帯の労働確保に介入することをおそれた為だった。しかし、この事業は半島の募集業者を介さないと絶対に無理である。しかし人数が集まらなかったのでここで地区の警察官の助けを借りた。警察官には報酬が支払われた。目的は労務者の契約(日本語で書かれた)数を獲得することだったので、半島内、さらに内地で逃亡者が多く出た。内地では労働者不足でよりよい条件の職場を見つけることができた。

 

1941-1944の官斡旋でも労務者の同意を必要としたのは同じ。しかし官斡旋は労務報国会のような半官半民の団体が事業主の代理となり労務者を集めた。この団体はほぼ朝鮮人が率いていた。各村にノルマが課せられ警官や村のリーダーもまきこみ、かなり強制的に実施された。このノルマは、地区大量動員による農村の病弊化でのコメの減産を防ぐ目的があった。

 

1944年の戦争末期の7か月、内地と同じ徴用となったが、ここでもノルマで、内地の入管で徴用に不適切な体の弱い人とか精神疾患者達が多く帰されていることから、意図的に徴用を避けた形跡がある、と著者は書いている。

 

その辺からも内地と植民地朝鮮では徴用認識にかなりの温度差があったということが察せられる。著者の指摘する朝鮮側の積極的コラボの背景には、内鮮一体という当時のスローガンも一役買っている。

 

欧米も植民地で動員を行った。目的は日本の侵略に対する植民地軍の創設・強化である。植民地軍は非白人で構成されていた。だが、日本は土壇場まで朝鮮人の労務動員にこだわっている。その結果徴兵された日本兵の大量戦死・餓死が起こり、兵力損失で自分で自分の足を撃つ結果となった。

 

日本側は朝鮮人を、怠け者・のろま、天皇への奉公心に欠ける精神の弱い人間、とみなし、信用していなかったということが、著者によって徴兵に踏み切れなかった日本側の主要原因に挙げられている。しかし、このような朝鮮人の行動性格は宗主国に対する植民地の消極的抵抗の現れで朝鮮人のもって生まれた性格ではない。

 

その上、日本人にとって"内鮮一体"は、全く違った意味を持っていた。朝鮮人の日本人化である。一体化は、日本名への改名、日本語を話す、天皇崇拝、死をもって天皇への奉公、極端に禁欲的生活の薦め、等々の日本人に成りきることで達成する。

あの当時の段階ではハードルが高過ぎてまず無理だ。しかも大多数の朝鮮人は日本に対するさらなる不満と反感を抱いた。しかしこの波に乗った"日本人を目指す朝鮮人達"が現れたのも否定できない事実である。

 

日本軍に混入された朝鮮人兵士は日本軍と全く同じ残虐行為に従事したのだが、連合軍捕虜のキャンプ護衛として使われたのでBC級戦犯として有罪となった上、より残虐な兵士というレッテルまで貼られた。靖国神社には約2万1000人の朝鮮人が祀られている。

 

しかし、戦後の曲折した半島の歴史の中で、このような日朝コラボの事実は全く漂白されてしまっている。現在は、日本=加害者、韓国=被害者、という図式のみであり、これが韓国側の国民的集団回想とまでなっている。最近になって、この図式は史的事実を反映していない、という声が韓国内でも出てきたが、日本のネトウヨに密着しているところから、この動きもきわめて政治的という印象を受けざるを得ない。

 

朝鮮半島の動員は、朝鮮側の積極的協力なくしてはあり得なかった。これが著者の結論である。内地に動員された朝鮮人達の取り扱いはさまざまであり、ユダヤ人虐待の同等として全体的に性格ずけられるのかどうか、疑問の余地がある。

 

この本ですが、米人にとっても難解度が高いです。理由は難解語彙の選択、読者に植民地の歴史に関するかなりの知識を必要とすることです。しかし、資料や統計にもとずき、バイアスを可能な限り避けている、という点でかなり信用がおけるという印象を受けている。