chuka's diary

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マグニツキー法はフェイク!?

下の記事への拙コメントから返コメ記事を書いていただきありがとうございました。

日本に人権外交をする資格は? マグニツキー法が制定できる国になるべき | Social

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この法はオバマ政権下(2012)に下院と上院で共和党を中心として成立した。

ちょうどロシアがWTOに招かれ加盟となった時期と一致している。というのは、米にはジャクソン=バニク修正案、1973、があり、共産国を国連人権憲章の違反国という視点から、米国はそれらの人権違反国との通商協定を禁止していた。これらの国が米国を中心とする自由経済の繁栄の恩恵にあずかるべきでない、というスタンスに基図いていた。

ソ連崩壊後のロシアもこの規制下にあったが、WTOに規定されている恒常的最恵国待遇に従うにはこの修正案からロシアを除くことが法的に必要となった。

 

オバマ大統領はこのマグニツキー代替え案に抵抗した、と日本語ウィキには書かれている。法案化しなくとも大統領の外交権限内で対応するべきだ、というのが理由だった。しかし、この法案なしには議会側からジャクソン=バニク修正案からロシアを抜けさせないと通告され、承認に切り替えた、と書かれている。

 

だからマグニツキー法はジャクソン=バニク修正案の替わりだが違いがある。この法の制裁の対象は国ではなくマグニツキー氏の獄死に関連した個人や組織となっている。また、条文にはマグニツキー氏だけでなく、他の人権侵害のケースも含まれる、となっている。

結果として、このマグニツキー法でプーチンのロシアにはソ連式の人権蹂躙国というレッテルが貼り付き彼をかなり動揺させたと言われている。

2017年にはグローバル・マグニツキー法となり、世界中に適用されることが目的となった。

 

マグニツキー氏は2009年に悪名高いモスクワの刑務所に拘束され裁判を待っていた。しかし長期間の拘留中に獄死。彼は拘束中、すい臓炎という生命に危険な病気を患い、治療を充分受けず、最後は拒否されて症状が悪化、獄死前にゴム棒で数人に殴打され死亡、と報告された。しかも、彼の拘束理由がロシア警察の汚職を摘発した為、というので、ロシア国内を始め、世界中でプーチンの人権侵害として有名になっていた。

 

ロシアでは政府機関と民間の人権擁護団体両方から調査され、報告書が出されたが、どちらも劣悪な刑務所の重大な人権侵害が原因という結論となった。

これに関連して多数の処分者が出たとも報告されているが、マグニツキー氏に治療を拒否した責任者の女医が全く処分されなかったことで、プーチンに対する非難は一層高まった。

 

だが事実は、マグニツキー法の成立は、このマグニツキー氏の獄死を汚職まみれのロシアの陰謀と決めつけたキャンペーンの成功の賜物だった。このキャンペーンの中心人物は、ビル・ブラウダー。マグニツキー氏の当時の雇用主だった。

 

ブラウダー氏は米国人だが現在英国籍。ソ連崩壊後のロシアにいち早く乗り込みヘッジファンドを運営、荒稼ぎで巨富を築いたと言われている。

知られているのは、2005年にロシア入国をモスクワ空港で拒否されるまでむしろプーチンの賞賛者であったこと。その頃からロシア国税局との間に問題があった、という情報が流れている。しかし世界で流れたのは、ブラウダー氏からの情報のみ。何しろロシア語が分からないので、翻訳もブラウダー氏のサイトからのみだった。

 

しかし後になって、ブラウダー氏側の翻訳には重要な箇所で意図的なエラーが多く指摘された。だからブラウダー側の主張、ロシアの警察官二人に率いられた警官達がブラウダーの経営する会社を突然捜索、会社登録に必要な法的文書及び公式社印を持ち去り、ブラウダー氏の"ヘルミタージ投資会社"を勝手に乗っ取った。そこにロシア税務局からの240億円という超大額の税金払い戻し金を受け取って一味はトンずらした、というクレームについて誰も疑う者はいなかった。

 

名を指摘された2人の警官の一人が現在ロシアのオリガーク(財閥)になっていることを金の流れの証拠として挙げている。プラウダー氏によれば、マグニツキー氏はこの汚職陰謀の調査目的で雇われた現地の税理弁護士5人の一人でもっとも有能であり、逆に警察を汚職で告発、その為に逮捕された、と主張。当時これに対して疑問を唱える人はいなかった。しかし、事実は、マグニツキー氏は弁護士ではなく、ロシアの税金にくわしい経理担当として雇われ、この事件以前からブラウダー氏のもとで働いていた。マグニツキー氏が弁護士でないという事実を突きつけられて、ブラウダー氏は、彼は弁護士資格は持っていなかったが、法廷で彼の持ち会社代表として弁護士同様の仕事をしている、と弁解している。しかし現在に至るまで、ウィキを始めネット情報ではマグニツキー氏は未だに税理弁護士となっている。

 

ネット情報はいかにエラーに満ちているかのいい証拠だ。

 

それどころか、ブラウダー氏は関連会社雇用者の半分以上をアフガニスタン戦争復員者とか身体障碍者で埋め税金を逃れていたという情報も出てきた。これらの新情報に対して米政府やWaPo(ワシントンポスト)及びNYタイムスはプーチンの逆襲として無視。これをネタにしたドキュ映画の上映は、ブラウダー側の激しいプレッシャーで会場側が辞退。

 

国際的主要メディアとしてドイツのシュピーゲルが、2019年11月に、独自調査による結果としてブラウダー氏の説の辻褄があっていない事を指摘する記事を出している。この記事に対してもブラウダー側は抗議キャンペーンをはったが、シュピーゲルは調査による結論を曲げることは出来ない、と理由を並べた反論記事を出した。

 

シュピーゲルの最初の記事の最後の部分で、マグニツキー法の採用拡大の源となった氏のストーリーは、

too good to be true(=話がうま過ぎて信用できない) ではなく、今や

too good not be true (良すぎて作りばなしを越えている)と指摘されている。