chuka's diary

万国の本の虫よ、団結せよ!

【映画】"軍艦島"(The Battleship Island )

米ネトフリであの"軍艦島"2017(The Battle Ship Island)を見ました。

この映画には当時約22億円という大金が注ぎ込まれた。いわば鳴り物入り。しかしこの手の映画には逆に観客の怒りを買う駄作が多いのも事実です。さてこの"軍艦島"はどうだろうか?

 

軍艦島には"反日映画"を手始めに、アクション、戦争映画、残虐映画(=gory horror film)といろいろレッテルが貼られたのだが、英語圏ではアクション、or  戦争映画で人間のサバイバルがテーマという線でほぼ落ち着いたようです。

 

しかしこの映画には確たる主人公がいない。いわば軍艦島という地獄島に囚われた半島からの朝鮮人徴用工達全員が主人公。しかしその中で主要人物が数人います。

その主要人物の中で一番人気を得たのはソヒ(sohee)という子役だが、なぜか天才少女と呼ばれたあの"美空ひばり"ちゃんにそっくりなのだ。

 

下の動画の最初にソヒちゃんの舞台姿がちょこっと出ています。この子がステージで歌って踊っているのは当時連合軍兵士の間で大流行した"スイング"。これもひばりちゃんと同じ。もっともひばりちゃんのは戦後の米軍占領下。これが戦争末期1945年の徴兵者の壮行会で演奏されている。いくら半島の京城のホテルとはいえこれも驚きモモノキ。

 

しかも一卵性親子ぶりもあの"ひばりちゃん"にそっくり。しかしこの京城の"ひばりちゃん"はどうしようもないダメ父さんことカンオクのせいで、軍艦島まで引きずられ辛酸舐め子ちゃんになった。だが痛ましい彼女の姿の下からちらちら見えてくるは大人も顔負けするどん底人間の強さ(=resilience)だ。プランテーション・メンタリティ(=奴隷根性)の生きた見本みたいなダメ父さんを徴用工達による軍艦島の叛乱に立ち上がらせたのも、このソヒちゃんの放つ力なのだ。

 

このダメ父さんは京城でバンドリーダーをしていたのだが、総督府要人の妻との浮気がバレて身の危険を感じ、知り合いの警察官に泣きついて賄賂(朝鮮語でもワイロ)で徴用を装って内地に逃亡を図った。しかもちゃっかりと娘のソヒちゃんと楽団メンバー全員もこの企みに参加。本土で楽ができると思ったとか。

しかし下関で例のごとくおべっかとワイロで日本側の警官を丸め込もうとしたのだが、全く通用しなかった。つまり京城の警官にうまく騙された。本物の徴用工として仲間全員が軍艦島の炭鉱へ。当然幼いソヒちゃんも一緒。

 

徴用工ストーリーとしては最初から時代考証に問題があるが、映画の世界は捏造の世界と割り切って見ることが肝要。映画の命は何といってもストーリーと出来映えです。

 

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下の動画は予告編。冒頭で徴用工の給料から渡航費を始め食費・住居費といろいろ引かれる事が拡声器を通じて日本語で一方通告。この動画では途中でちょん切れているが、映画の英字幕ではその中に戦争国債を買う費用、医療保険料の差し引きが通告されている。

これは驚くべきことだ。徴用工は日本の戦争を支える為に国債まで買わされていたのだ。また米では第二次大戦中に給料凍結を補うために医療保険が普及したのだが、さて日本でもそうだったのか?疑問だ。

 

徴用工ではない他の主要人物は上海臨時韓国政権から派遣された一人の軍人。軍艦島のどこかに拘留されている上海臨時政府要人を密に脱出させる計画のもと、不思議にもなぜかたった一人で島に徴用工となって潜入していた。

この勇気のかたまりのようなスーパーマン軍人を演じているが韓ドラ大スターのソン・ジュンギ。"太陽の末裔"2016 の主役で今も絶大な人気を誇っている。下の動画にもリーダーとして叛乱を指揮するシーンがちょこっと入っています。

 

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しかし、この映画には大スターのソン・ジュンギを喰ってしまったもう一人の韓ドラ大スターがいた。彼の名はソ・ジソブ。上の動画のクローズアップ写真が彼です。

ソ・ジソブも過去に韓ドラ大ヒット作の主役を演じている。あのダメ父さんカンオク一行も押し込まれた軍艦島行きフェーリーに同乗していた京城のチンピラヤクザ、つまりソン・ジュンギの臨時政府派遣の軍人とは正反対の人間の屑、がソ・ジソブの役。

 

もともと体育大出身で水泳で鍛えた見事な筋肉。このソ・ジソブの下着一枚の風呂場の戦闘シーンの迫力が凄い。日本にも彼の熱狂的ファンは大勢いるはず。

 

一見ユダヤ人収容所もどきの軍艦島だが、そこで実際に徴用工を頭から押さえつけているのは同じ朝鮮人の徴用工ボスと彼の手下達。

ソ・ジソブの扮するヤクザはこのボスに風呂場で挑戦、ボスの地位を暴力で奪った。

 

映画では徴用者達はダメ父さんと皆同じ。強者に這いつくばりワイロを出して便宜を少しでも図ってもらい、少しでも他よりましになりたいという者ばかり。

 

ということなどから、この映画は反日の歴史と違うという批判に韓国内で晒されることになった。

 

その上、あの拘束されていた臨時政府の要人までも、なんだかんだと徴用者の給料から天引きした金を炭鉱の所長と山分けしていた、という腐敗ぶり。

この裏切り老人は徴用工には口ではことあるごとに愛国の為の一致団結を説いていたのだ。しかも追い詰められた裏切り老人はソ・ジュンキの扮する軍人をアメリカのスパイだと告発、日本側に通告しようとした。

だから皮肉にもこの軍人の任務は裏切り者に変じた臨時政府要人を殺すことに急遽変更を余儀なくされた。

 

続編を書くつもりです。