chuka's diary

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米フェミニズム、大敗退の危機!?

先週、SCOTUS(=米最高裁、the Supreme Court of the United Status、カタカナのスコータスに近い発音)が中絶合憲判決として有名な"ローV. ウエイド"(Vはヴィと発音)の採決をすでに取り、トランプが3人の反中絶判事を送りこんだせいで、反対多数となりこの1973年の判決を覆すことになった。しかし公式にはまだ未公開だが、この多数派の最年長判事が書いた多数派の意見書が、トランプがレッテル貼りをした"フェイクニュース"の一つ、POLITICOにリークされてしまい、下の記事のフォトのように最高裁に連日デモ隊が押し駆けている。当然、参加者は女性達。

 

news.yahoo.co.jp

 

今年の6月にはまずミシシッピー州の規制法についての最高裁による判断が公表される見込みだったので、タイミングとしては驚くことではないのかも知れないが、中絶の合憲性を放棄する判決がすでに下ったという情報はプロ・チョイスを支持する大多数の米市民にとってはもの凄いショックとなった。

 

プロ・チョイス(pro choice)とは、中絶は女性の人生についてのプライベートな選択の自由という法的解釈を意味している。これは女性特有の自由権として"ローV.ウェイド"の最高裁判断によって確立された。

ただし、この裁判は"ロー"(Roe)という一般的仮名を被せた夫婦と当時妊娠中の若い女性、それに実名の中絶医が原告となり州中絶禁止法による被害者集団を代表しテキサス州の地区検事ウエイド氏を連邦地裁に憲法違反として告訴したもので、きわめて特異な裁判のケースとなっている。というのは原告夫婦は妊娠していなかったが夫婦なので可能性があり、そうなれば妻は妊娠に耐えられないという申し立て、一方の若い女性は期間中に出産してしまったということから、裁判の正当性に関して意見が割れている。 

 

しかし、判断は中絶の法的規制は胎児の保護等などの条件付きという余地を残した。この為、最小限の妊娠40週の前期に該当する12週間以内の中絶の選択が全米の各州で認められた。その前はカリフォルニアやNYなどのわずかの州を除いて中絶そのものが犯罪となっていた。

 

しかし今回のは、中絶規制を各州の立法に戻す、という時代の逆戻り。その結果、テキサス、アラバマなどの深南部州では州議会で多数派の共和党が異様に厳しい中絶規制法をすでに立法化してその日の来るのを待っている、という格好になっている。

 

たとえばテキサスでは中絶は従来の12週間から大幅短縮の6週間以内にしなければならない。当然その後は犯罪となる。しかも中絶しようとする女性を他州のクリニックに車で連れて行った人も犯罪幇助で起訴され、犯罪通告者にはテキサス州政府が賞金まで出す、という加熱事態が発生。これではテキサスは昔の"ワイルド・ウエスト"(=開拓時代)に逆戻りと米市民を唖然とさせた。

 

しかし、事実は、50年前の最高裁の中絶合憲判断は超党派で決められた。カリフォルニア州知事として中絶許可に署名したのは、あのレーガンであった。しかし彼は大統領選で中絶反対に回り、大統領になって超保守の女性判事を最高裁に送ったのだが、彼女は心変わりして中絶維持派となったというおまけ付き。

 

しかし、今、ここでのルーザー(=敗者)は、何といってもフェミニズムでしょう。往年のフェミニストの組織とリーダー達は世代交代で消滅しつつある。そこで、民主党側は女性の怒りを11月の中間選挙にぶつけるという戦略を打ち出している。これが果たして成功するかどうか、大変注目を浴びている。民主党が多数派となると、議会で中絶を連邦法として立法化する予定だそうだ。

 

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