chuka's diary

万国の本の虫よ、団結せよ!

伊藤詩織の "Black Box" or "Black Out" !?

近くの図書館から伊藤詩織さんの "Black Box" を借りて読みました。この本は2021年に発行された。日本語の原本は2017年だからおよそ4年のギャップがある。

 

この本の遅れた米国出版についてはネットで反詩織さん側からネガティブな憶測が出まわっていた。

 

レイプ加害者として告発された元TBSワシントンDC支局長山口敬之に対する損害賠償訴訟は今年7月に最高裁によって控訴棄却で完結となった。

詩織さん側の部分的勝訴で終わった。部分的とは、詩織さん側の主張するレイプドラッグ説は虚偽だった、ということにもなったということで、全く奇妙です。

 

これ、フェミニストを自称する人や支援する人達の言うように本当に#MeeTooの勝利と言えるのですか?

 

私は伊藤詩織さんについてのBBC制作ドキュメンタリー、" Japan's secret shame"を見て、その印象を記事に書いていました。このドキュメンタリーは今ネットではフリーで見られなくなっている。このドキュは詩織さん側のみからの視点で制作されている。だからかなり一方的だと感じられたシーンもあったと記憶している。しかし何といっても天下のBBC。#MeeToo の波に乗ってこの事件は世界的に大きな関心を呼び起こした。

 

chuka123.hatenablog.com

 

実は今回読み終えた彼女の本の方にはかなりのひっかかりを感じている。最初から彼女は正直じゃない、という印象だ。これはBBC制作のドキュメンタリーが与えた印象とは大きな違いだ。

 

本では詩織さんのプライバシー厳守の原則のせいで中学時代に長期入院を余儀なくされた病名が伏せられている。バスケットボールの試合後に倒れたということからスポーツ関連の身体負傷のようだがそれで数か月の入院となった。この謎の病名に興味を抱いた読者は私だけではないようだ。文中ではこの入院体験がその後の彼女の生き方を変えたとさえ書かれているが入院中の身体の状態、たとえば手とか足とか、についての記述は全くない。

 

フツーの高校生とは一線を画した詩織さんは、大学受験より外国に行きたいと親を説得、一年間米カンザス州の高校に留学。そこで米語を習得したとなっている。

そして高卒後のかなり変わった学生生活。本では完全にオミットですが彼女は日本の短大卒なのだそうです。しかし高卒後、日夜の仕事を掛け持ちでアメリカ留学費用を貯めたとなっている。

 

日本の大学(短大も含めて)で取得した科目は米大学の一般教養科目に交換されます。短大卒を隠す必要がない。彼女の留学計画はむしろ立派なものです。

だが、NYで学生する前に他国に住んでそこの大学から交換してくれる科目を取得した。これは彼女が目指すNYの私立大の授業料が高すぎるのが理由、と書いている。要は究極の学費節約。詩織さんはドイツ、スペイン、イタリアの大学で英語で授業の科目を取得。特にスペインではアラブ語習得を目指してシリアへ交換留学も考えたがシリア内戦で断念。聞くだけでもメチャ頑張り屋ということがわかる。

だが彼女の脱日本の背景には男性パートナーの存在があったとほのめかしている。これも表現がぼやかされてはっきりしない。詩織さんはNYに行く前にすでに世界40か国を訪問とまで書いている。一体どんなパートナーだったのか? こうなると反詩織さん側からの憶測は尽きないようです。

 

詩織さんはとにかく最初からNYのある私立大学で撮影とジャーナリズムを勉強したかった。だから下準備ができるとNYがどんなに素晴らしいところかとパートナーを説得してNYオフィスに移転させ、共に移り住んだ、と書いている。

 

だが一年で二人は破局。そこから詩織さんの本当の苦学生活が始まった。

非常に不思議なのは、詩織さんは元カレについて愛していたとは一言も述べていない。また彼女にとってあの時点での結婚は全く圏外の話のようだ。だが彼女の大奮闘にもかかわらず詩織さんは経済的困難を理由に卒業にあれほど念願だったNYの私立大を中退、日本に帰国してしまった。卒業までたった一つのセメスター(半年学期)を残して。それから4か月後に起こった例の強制性交事件当時はロイターのインターンをしていた。

 

ところで詩織さんはパートナーと別れる前から"ピアノバー"で働いていた。山口敬之氏氏と出会ったのもそこだった。だから英語人読者は、彼女はそこでウェートレスか、それともピアノでも弾いていたのか、とにかく頑張ってるな、と想像してしまう。

 

しかし彼女のピアノバーは、私達が頭に描くピアノバーとは全く別のしろものです。山口は日本人駐在員相手の"キャバクラ"だと公言している。だから英語ではホステスバー(=hostess bar)にあたる。しかし彼女はそんな事は一言も説明なしでスルー。

苦学生がホステスバーで酒を注ぎ客のヨイショをしてせっせとチップ稼ぐ。このシーンのどこが悪い、と私は言いたい。それを彼女はなぜ隠す?

しかも彼女はジャーナリストなのです。

 

彼女のバイトについては元カレもよく思わなかったようだが、詩織さんはむしろこれが好きでもっと日数を入れたかった、だが、元カレに夜遅くなるので猛反対された、と書いている。しかもベビーシッター(子守り)よりピアノバーの方が金がよかったからしようがないだろう、という言い訳を書いていた。

 

彼女の学生バイトを違法行為と指摘し糾弾していたのは日本の反詩織側。これがバレるのを怖れて米国では彼女の本が出版されていない、と堂々とネットで主張するブロガーは複数。

しかし米では違法労働している人達は星の数ほどいます。外国人学生は外国から学費をたんまり持ちこむお客様でもあります。少々の事はイミグレも👀をつぶるのが現実というもの。それに国に帰れば民間外交官になって米の評判を高めてくれる。つまり米にとは友好外国人というわけでただ感謝あるのみ。入国禁止処置は、問題のバーがガサ入れされ彼女も現行犯で逮捕ということにならない限りは、まずあり得ない。

もう一つ重要なのは、彼女の英語本に書かれた内容はフリースピーチとみなされるということです。だから本に書かれた事を法的根拠として入国ビザを許可しないという政府の介入も全く現実的でない。

 

下のMVはお馴染み、ビリー・ジョエルの大ヒット、ピアノマン。NYのピアノバーの方もこの曲でしっかり有名になった。このMVには、お尻を触られたウェートレスがビジネススーツの客に注文の酒をグラスからぶっかけるシーンがある。歌詞では、(ピアノバーでは)ウェートレスは政治を実行している、と言ってます。セクハラ我慢は古い話になりました。

 

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