chuka's diary

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トランプのアメリカ:モラー報告書がいつの間にかバー報告書に!?

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3・24の今日の昼(日本時間3・25早朝)ついにバー司法長官が議会の民主共和の司法委員リーダー4人にモラー特別検事チームによるロシア大統領選介入事件の捜査結果についてのサマリー(要約)を送り、その内容がただちに公表された。それがまた、米を2分する大問題になっている。
 
日本のメディアのみならず日本の市民に誤解されているのは、バー報告はモラー報告ではない、別個のものであるという事だ。モラー報告がそのまま市民に知られては困る、というトランプ政権の意図によってバー元司法長官はトランプに雇われた。いわばトランプの火消しである。だからバー報告は単なるサマリーではなく政治的演出とみるべきだ。長い大報告書を提出する際にサマリーを付けて出すのが必然だ。しかしここでのサマリーはモラー氏ではなくバー氏によるもので、内容はバー氏によるモラー報告の解釈の仕方である。
 
バー報告は4ページであり、私も読んだ。素人にも十分理解できる文章で書かれている。おそらくトランプと彼のサポーター達を念頭に置いて書かれたせいかも知れない。アメリカ政治に興味のある方には一読を薦めたい。しかし、この報告の容易さが曲者だ、というのが拙者の印象だ。
 
以下は拙者の理解によるバー報告。
 
ロシア政府=プーチン、は大統領選挙に介入した。
・フェイスブックやツィートでフェイク・トランプ賛辞をカキこして拡散。
・ロシア諜報部による民主党本部のEメールハッキング
 
拙解説:ハッキング後、盗まれたEメールがウィキーリークスに登場し始めた。
ところが2016年投票日の一か月前に浮上したアクセスハリウッド動画の公開後24時間以内にウィキーリークスが盗んだEメールを大量公開。その中にはサンダース候補を泡沫候補とこき下ろすのがあり、メディアもあきれた。一方、動画では、トランプの、プッシーを掴む、という下品な表現が大問題となり、共和党内では一時的にせよトランプ公認を取り消せ、代わりにペンスを、という声が湧きあがり、身から出たさびとは言えトランプ陣営は死ぬか生きるかの瀬戸際に立った。
 
プーチンを除くロシア諜報部及び軍部側関係者はモラー捜査官によって起訴された
 
モラー捜査の目的:
トランプ選挙キャンペーンのメンバー(トランプ自身を含め)がロシアと共謀したかどうか。共謀とはいかなくてもこれを選挙利用したかどうか?
 
上を隠す目的で捜査妨害を行ったかどうか。
 
というスタンスでの捜査による結果は:
トランプ及びトランプ選挙対策のメンバーが共謀したという証拠はみつからない。
ただし、ロシアから多くの支援申し出がトランプ陣営にあった。
 
よってモラー氏は、ロシアとの共謀を理由として起訴を進言しない。
捜査妨害に関しては証拠からは決着をつけられない、よって司法省に一任。
 
これを受けてバー長官はロシア共謀・捜査妨害について証拠不十分で不起訴とする、と結論ずけた。刑事訴訟は100%確証がないと有罪にできない、という米法廷の刑法判決基準をあげた。
 
上のバー報告にはモラー報告の抜粋はほんの2-3箇所、それも文章ではなく、断片である。
捜査妨害の箇所に引用されているのは、『大統領には確証はないが無罪とは言えない』、という奇妙な文片である。これでは一体どの部文から引用してきたのか不明。
 
米司法省の内規として現職の大統領を起訴しない、というがある。しかしこれは、法はすべての市民に公平平等に適用されるという米国憲法違反であるという反論がある。しかしこの伝統は守られてきた。これまで、大統領の起訴については、『弾劾』として下院で決定される。その範囲は国家反逆罪から軽犯罪まで。
だから、なぜ司法長官がここでしゃしゃり出て大統領は証拠不十分で無罪という判断を下すのか?
理由は単純だ。今日の下院は民主党多数であるからだ。弾劾決定を回避する為である。
 
100%確証がないので起訴しない、というのもおかしな説明だ。これが事実であれば、検察の起訴は100%有罪につながるということになる。米では大審院システムを使っていて、問題となる起訴はこの大審院の判定で決定される。100%確証は裁判での市民裁判員の判断基準であって起訴する検察側の基準ではない。ここで一挙にすべてを握りつぶしてしまおう、というつもりだと思われる。
 
時をさか上って1992年、バー司法長官はパパ・ブッシュ大統領により司法長官に任命されている。だから今回はリピート。司法長官として彼のなした事で最も印象に残るのは、リーガン時代のイラン・コントラ事件の取り調べでウソをついた、つまり司法妨害として起訴されていた政府要人をすべて大統領恩赦してしまった、という事である。
今回は彼自身が司法省に、コミFBI長官の罷免は大統領の権限として正当、モラー捜査は違法だ、というメモを送りつけ、それが藁にもすがりたいトランプの目にかなった、と言われている。
去年の上院司法委での彼の信任審議はモラー報告書の公開についてであった。バー氏は全文公開には賛成だが、司法長官の権限下で出来る限り公開する、という矛盾する回答を繰り返した。委員会で信任されたのは、上院は共和党が多数であるからである。
 
バー氏はトランプとの契約を実行しているだけだ、というTVのコメンテーターがいた。
 
トランプ側からの法的解釈スタンスからすると、起訴されなければ当然無罪で、これ以上この問題は追求されるべきではない、と言うことになる。これはモラー報告を公開しない法的根拠となる。
 
トランプは、『共謀罪証拠なし、捜査妨害罪証拠なし、最初から私は無罪潔白、モラー捜査でこれが証明された、と例のごとく事実とは違う発言をしている。トランプ狂信派はこれで一期に2020になだれ込もう!と気勢を上げている。
 
いつ、本物のモラー報告書が公開されるのか?未定です。