このところアメリカではトランプをめぐる新情報が毎日のように続出、ついていくのも一苦労
先月の12日、アマゾン王国の創設者・CEOであるジェフ・ベゾスと夫人は離婚声明を発表。ところが翌日には‟ナショナル・エンクワイアラー”という全米最大のタブロイド紙に愛人と一緒の写真がすっぱ抜かれ、不倫で離婚、と書きたてられた。ベゾスのような超セレブにはこういったスキャンダルは珍しくもないように見えたのだが、この事件には裏があった。
このベゾスという人は本当に裸一貫からアマゾンを築きあげ、50代前半で世界一の大富豪となった。彼の資産は14兆円と報道されている。どこかの貧乏国の予算額よりは大きいだろう。それと、このベゾスは13年に全米一の大新聞ワシントンポスト紙のオーナーになっていた。ワシントンポストと言えば、フェイクニュースの大黒柱だ。
当然トランプとは犬猿の仲。トランプはアマゾンが儲ければ儲けるほど、米市民が損をする、とまで言っている。アマゾンは郵便局の配達料金が安いことを悪用して儲けている、とツィートまでした。
今回ベゾスから恐喝されたと大衆に告発されたAMI(American Media Inc)は‟ナショナル・エンクワイアラー”の親会社だが、オーナーはデビッド・ペッカーという男でトランプの長年の盟友だ。
16年の大統領選挙中には下のように、ヒラリーは不治の病で6ヶ月の命、と自分の三流週刊紙を使って物凄いデマを飛ばした。この、ヒラリーは死ぬ、というアイデアは前々回の『トランプのアメリカ』で触れた選挙戦略師のロジャー・ストーンに由来するようだ。関連するEメールが押収された、と報道されていた。ロジャー・ストーンについてはネトフリックスのドキュメンタリー映画に詳しい。
こういった有名人ゴシップをネタにした週刊誌はスーパーのレジ近くに置かれているから、スーパーマーケットタブロイドと呼ばれている。頻繁に出てくるニュースは人間と宇宙人のベィビー発見、とかいった類で、一体こんなの誰が読むのかと不思議に思っていたが、大昔パートしていた職場の同僚だった若奥さんがせっせと買い込んでいたので、結構人気はあるようだ。
下はベゾス夫妻が離婚を公開宣言した翌日に発売された‟エンクワイアラー”の表紙だが、ベゾスと愛人の写真が掲載されている。しかし真相はベゾス氏と愛人の写真がベゾス夫人に送り付けられた事で離婚宣言に発展となった。その時点ではすでに二人は別居中であったから、来るものが来た、といった感じだ。
上はトランプによるアマゾンCEOベゾスの離婚ニュースについてのツィート。ベゾス=Bezosが ボゾ = Bozoのスペルに変わっているのに注目。ボゾは口語でバカという意味。
トランプはこういう風に人を見下げバカにする事に関しては全く躊躇しない男だということが分かる。最後の部分は、『アマゾンワシントンポスト』が近々、やるべき事をちゃんと心得ている人の手に渡ることを望んでる、とイヤミたっぷり。こんな下劣な人間がなぜアメリカの大統領に居座っているのか?と不思議に思わざると得ない。少なくともアメリカの半数以上がそう思っている。
誰がこの写真を撮って、どうして‟エンクワイアラー”の手に渡ったのか?さすが世界一の大富豪。ベゾス氏は著名なLAの調査会社を雇って捜査を開始。その結果は?
問題の写真は前フォックスニュースキャスターだった愛人の兄弟が撮ったものだという事が判明。今のフォックスはトランプの翼賛放送局に成り下がっている。ベゾスの愛人の兄弟も熱烈なトランプ崇拝者で、政治的目的で写真をトランプ側に渡した事は間違いないだろう。
ベゾスはこの事件の陰にはサウジがいる可能性がある、と言っている。事実サウジ国内ではカジョギ殺人でアマゾン不買運動がおきているくらいに嫌われている。理由は被害者の故カショギ氏はワシントンポストに頻繁に記事を載せていたし、事件後はポストが先頭に立ってこの殺人事件の謎を追求したからだ。
‟エンクワイアラー”は購買数減少もあってかなりの負債を抱えていたが、トランプの仲介でサウジから資金注入を受け経済破綻を免れた。その見返りが今回の愛人すっぱ抜き記事となった、という疑惑が出てきた。つまりサウジのリベンジだ。
カリフォルニア州は夫婦共有財産の州で、離婚の際には財産は真っ二つに分割。へたすればベゾス氏はアマゾンかワシントンポストかどちらかを売らねばならぬはめになるかも知れない。離婚はベゾス氏に財政的大問題を起こした。夫人とはアマゾン創設の前に結婚し、当時二人とも同じ投資会社のサラリーマンであったところから婚前合意書はない。
すると、‟ナショナル・エンクワイアラー”の親会社AMIの弁護士から、脅迫のEメールが送られた。彼らはベゾス氏と愛人の複数の写真を保持しており、その中にはヌードもある、と伝えた。これを‟ナショナル・エンクワイアラー”で公開して欲しくないのなら、調査を打ち切り、‟ナショナル・エンクワイアラー”のゴシップ記事は政治的目的ではない、つまりサウジは関係していない、という事を公開宣言しろ、というのだ。
ぶち切れたベゾス氏はAMIへの返答Eメールをメディアに公開してしまった。
事件はまだまだ続きます。この事件の核心はトランプ側の大統領選挙法違反事件に繋がって行くのですが、内容がかなり複雑で疲れてきたので次回で説明するつもりです。