昨日、米時間の9月24日の午後5時、下院のペロシ議長は下院でのトランプ弾劾決議に向け議会で捜査を開始する事を報道会見で明らかにした。
理由は、現ウクライナ大統領ゼレンスキ氏に大統領選の対立候補バイデン前副大統領を汚職容疑でひき続きウクライナ検察が捜査を続けるよう要請した疑いがあるということ。さらに2019年のウクライナ軍事援助をマルバニ主席補佐官代行に命じて留保させていた疑いも含まれているようだ。典型的な契約法の "Quid pro quo" (価値交換)である。
主席補佐官とは日本の官房長官だが、代行というのは上院の承認をいまだに得ていない臨時役。その方がトランプの命令に従うのみなのでトランプは故意に承認プロセスをオミットしているとも言われている。承認された本物の主要閣僚は皆トランプと喧嘩別れしたことを思い出せば納得ゆくはずだ。
米議会の"弾劾"=impeachment とは大統領及び閣僚級の政府高官の議会による裁判である。このウクライナ電話事件の直前には、あのカヴァノー最高裁判事を弾劾するべきだ、という声も上がっていた。この声は"謎のホイッスルブロワー事件"で立ち消えになっているが、トランプが一期大統領になれば、再び聞くことになるだろう。
弾劾では下院が検察の役で弾劾事項=罪状、通常判決では死刑に相当する反逆罪から大統領としてふさわしくない言動としての𠮟責処分まで、を挙げ、法廷=上院 に告訴。これを受けて上院で実際に裁判が行われる。2/3以上の上院議員の賛成で大統領は免職になるのだが、史実は芳しくないのだ。
これまで弾劾された大統領はただ二人。1867年のアンドリュー・ジョンソンと1998年のクリントン。アンドリュージョンソンのケースは内戦後の復興に関する政治的対立が原因だが、クリントンは自己の女性問題で証拠隠滅を図った事。しかしどちらも上院で否決されている。大統領は馘にならなかったがクリントンはアーカンサス州の弁護士免許を永久剥奪。個人的には不名誉この上ない。
ところで弾劾と言えばニクソンだが、ニクソンは弾劾前に辞任した。
上の史実からも大統領弾劾がいかに不人気で成立しにくいかがわかるはずだ。
しかも今回の情況も過去の2件と全く同じ。上院で成立が困難と見られている。それでペロシ議長もこれまで反対してきたわけだ。
しかし今回は、メディア(フェイクニュース?)と熱心党と化した民主党議員団に押し流されてしまったようだ。
しかもこの事件はもの凄いスピードで回転しはじめている。
ペロシが弾劾を決めた時には、ホイッスルブロワー(政府内の告発者)の告発文内容も問題電話の公式内容も一切公開されていなかった。
しかしやはり同日、共和党の支配する上院で告発文公開を求める案が可決したことから、今日、朝10時になってモラー下院喚問の翌日にトランプが電話した内容が即公開された。
今週中には問題の告発文も公開されるという。ホィッスルブロワー(内部告発者)の弁護士によって本人が下院の査問に応じると報道されている。
トランプの電話内容を読みたい方は下をクリック。拙者にはトランプがマフィアの親玉のように聞こえる。語彙の中には内輪の政治用語が混じっているので意味が取れない箇所も拙者にはあった。しかしトランプ節の箇所は難しくない。この電話は30分で、双方とも英語。略された部分がある、と指摘されている。
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2019/09/Unclassified09.2019.pdf