先週10月6日、上院司法委員会による1/6（トランプ・クーデター）調査の中間報告が公開され、大きなニュースになりました。この報告は364頁です。
これにより1月６日のクーデターを前にトランプが司法省を乗っ取り、司法省からジョージア州北部連邦検事のBJパク氏に手を回しジョージア州大統領選の不正調査着手を宣言させる陰謀を企てた事がほぼ明らかにされた。これはペンスによる州選挙人集計認定を阻止する陰謀の一環だ。
＂ほぼ＂、をつけたのは、この調査は任意で行われたので、陰謀の中心人物であるトランプの手下となって働いたクラーク弁護士が喚問を拒否しているからだ。
このジョージアはアリゾナと同等の激戦州だった。アリゾナ州はわずか1万500票の差でバイデン勝利となったが、ジョージアは１万1779票の差でバイデンが勝利。得票率はバイデン49.47％、トランプ49.24％、差はわずか0.23％。
しかし州都アトランタを含む大票田、フルトン郡ではバイデンの大勝利。ここはBJパクの管轄下であった。トランプはここでバイデンの不正で負けたというホラ吹きを止めないのだ。
当然ジョージアでは選挙直後に監査が実施され、再集計は３度もした。しかしトランプとジョージア州の共和党議員達は再びアリゾナ州のような選挙後監査を要求しているのが現状だ。
トランプの政権奪取の陰謀は1月２日ジョージア州務長官のラフェンスパーガー氏に
＂私の１万1779票を探して来い！＂と怒鳴りつけた電話で一端が暴露された。
ラフェンスパーガー氏はトランプ大統領との会話を録音し、これを翌日１月３日に公開した。政府要人の電話は公務として録音されるのが米では慣習だ。これは政治の透明性という原則に沿っている。
電話でトランプは、当時のジョージア州検事、BJ（ビージェイ）パクの名をあげ、あの男は俺の為に何もする気がない、あいつがこれまでトランパー（＝trumper、トランプ教徒)だったことはない、職から追っ払え、と暴言を吐いた。
BJパクは韓国系で小学生の時ソウルから米国に移住した弁護士。州検事の前は共和党州下院議員だった。
当のBJパクはこの電話が暴露された翌日４日付けで辞表を提出。辞表には予想しない事態で辞任するとなっていた。しかもパクはバイデンの就任式まで辞任しないと言っていたという報道が流れ、このパクの辞任劇はミステリーに包まれていた。
そのBJパクは上院喚問に協力、今回報告書で辞任劇の前後関係が明らかになった。それによると、発端はトランプの個人弁護士ジュリアーニの告発、ジョージア州フルトン郡では偽バイデン票がスーツケースでごっそり持ち込まれた、だった。この告発内容を重視して捜査しろとBJパクは辞任前のバー司法長官から命令された。しかし捜査結果はジュリアーニの根拠のないガセネタという報告に終わった。
脅迫電話の翌日、トランプは司法省代理長官ローゼン及び臨時副長官をホワイトハウスの執務室に呼びつけ、差別問題担当だった司法省弁護士クラークが書いた、ジョージア州選挙には不正疑惑があり司法省が公式捜査に着手する、という文書に署名しろと迫った。その際に何もしなかったBJパクをクビにし、トランプの選んだ者を連邦検事に任命するようにローゼンに言い渡した。
しかし、ローゼンは署名を拒否。そこでトランプは、ローゼンをクビにし、手下のクラークを代理長官に据えると脅かした。しかしローゼンを罷免するなら一挙に司法省トップ七人が辞めることになっている、と副代理長官ともどもトランプに抵抗。
結局同席していたホワイトハウスのトランプの顧問弁護士達からローゼン罷免を止めるよう説得され、トランプはこの陰謀をあきらめた。しかし恨は千年のトランプだ。
BJパクは司法省副長官代理から、トランプにクビにされるという警告を受けた。彼は翌日自ら辞表を司法省に提出、代理長官のローゼンに即受理されたという。これはお役所の掟を超えている。公務員が辞職する場合、少なくとも２週間の引継ぎ期間を政府に与えることになっているからだ。
もっともこのBJパクは2017年にトランプに任命されているので突如のクビ切りはトランプ政権では珍しくもなんともなくなっている。
トランパー(trumper)ですが、これはトランプの造語のようです。トルーパー（=trooper)をもじったものでしょう。トルーパーは元は＂勇猛な騎兵＂でしたが、今の米口語では＂モーレツ社員＂や＂モーレツ人間＂を指している。つまりトランパーはモーレツ・トランプ信者ということです。こういう人はトランプに見習って、恥も外聞も忘れ、違法行為も平気の平左でトランプに忠誠をつくす。まるでナチ党員と同じです。トランプ教徒を指すもう一つの流行語はトランピストです。これは反トランプメディアで頻繁に使われています。
下は辞任時の地元アトランタ放送局のニュース動画です。WSJ（＝ウォールストリートジャーナル）によると不正選挙捜査をしなかったというトランプの批判でパクは辞任を強制された、と報道していた。これもトランプの嘘で、パクは綿密に捜査をした、と今回上院で証言している。
