chuka's diary

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慰安婦は若きものを必要とす by 麻生軍医

さて前回では 陸軍慰安所は清潔な共同便所、という麻生軍医のメタフォールが、医者として全く不適切であると私は書いた。
しかし、当時の日本では❝共同便所❞とは娼婦を指す卑語だったので、これは麻生軍医のオリジナルではない。
彼の真意は、どうしても我慢の出来ない兵士のみ、最後の手段としての慰安所を使え、というわけだったのだろうが、共同便所の持つコノテーションによってとんでもない誤解を生んでしまったようだ。
実は麻生軍医も他の軍上層部と同様に、皇軍の神聖不滅というハイスタンダードを信じ、兵士の戦場での残虐行為、レイプに関しては、戦場での一時的な規律の乱れとしてしか理解できなかったようだ。
 
麻生軍医は軍の輸送船で集団上陸してきた女達のことを、兵隊慰問に来た芸人だと思ったそうだ。上官から身体検査をするようにという命令を受けた時には、なぜ芸人の身体検査をしなければならないのか不思議に思ったそうである。
産婦人科だから検黴をするようにと言われ、どうして100人の売春婦が戦場に連れて来られたのか、と驚いたそうだ。
最初に100人のうち、内地は北九州からの女性が20人、この人達はプロであり、20才以上で年長は40歳だったそうだ。身体もそれなりに年を取り、明らかに過去に性病を患った痕跡すらあった。
残りの80人は半島出身。皆素人らしく、処女がまじっていた。
実はこの麻生軍医は召集前は博多の公娼の検黴もしていたので、若干30歳に満たないのに、いわばその方面のプロでもあったのだ。
 
当時、世界の軍事強国の軍隊にとって性病(=VD)は大きな問題となっていた。当時でなくても、米国では南北戦争時にも問題となっていた。兵士へのコンドムの配布は第一次世界大戦ではじまった。1930年代にはコンドムのマスプロダクションがスタートし、日本も欧米各国も兵士にコンドムを配布していた。
 
ネトウヨの中には、検黴を慰安婦の健康診断と誤解し、高給の上に軍は慰安婦の健康管理までしてあげていた、とカキコしていたのがいた。
 
検黴は下半身の視診にしか過ぎない。潰瘍及びしこり、膿み、悪臭をともなうおりもがあるかどうかなどを陰部を中心に肉眼でみるだけだ。中には、膣内に筒を差し込み、膣中の分泌液を調べる人もいたらしい。あの当時の衛生管理態を考慮すると、これは検黴する側も感染の危険をおかしていることになる。
ところで、陸軍では産婦人科医は希な存在。だからおかど違いもはなはだしく、まず、的確な検査はできない、と考えた方がよい。軍医がいなければ、衛生兵がすることになっている。もうこれは茶番としかいいようがない。麻生軍医は意見書の中で、この検黴を自分の欲望のはけ口にした軍医者・衛生兵がいることを告発糾弾している。
 
ところで当時もっとも恐れられていた性病は梅毒である。ペニシリン投薬が普及し始めたは1943年だから、それまで梅毒は体がこぶだらけになり、狂死する不治の病であった。この梅毒を診断するには血液検査が不可欠であるが、これなどはほとんど実施されていないのだ。後になって、麻生軍医は実際にこの血液検査をしたら慰安婦の50%が梅毒に感染していた、という結果を得て驚いたと、上海から上海へ、という彼の日記で述べている。
こんないい加減な検黴でも梅毒を持っている、判断された慰安婦は、だちに営業停止、サンバルサンまたは606号 と呼ばれた薬を注射されるのだが、サンバルサンは実は日本の科学者が発見した梅毒症状を抑えるもっとも効果的な薬だった。しかし人間に取っては猛毒である。値段も高価で、治療費は慰安婦個人にすべてチャージされた。営業停止期間の利益損失もチャージされたから、慰安婦にとっては泣きっ面に蜂だったはずだ。慰安婦の証言の中には、梅毒だと言われてすぐにサンバルサンというわけで、これを繰り返し注射された、というのがあるから、いかに彼女らが非人間的な取り扱いを受けていたか、理解できるはずだ。
 
 
上に引用した文だけでなく麻生軍医意見書には医者として全く不適切な箇所が他にもある。
 
サレバ戦地ニ送リコマレル娼婦ハ年若キモノヲ必要トス
慰安婦は若いコを。
その根拠は、年齢が若いほど性病感染率が低下するからだそうだ。
しかし、年齢別娼婦の性病感染率は客数の数に比例するのが一般的である。15-16歳の売春婦はなりたてであるから、感染率が低いのは予想できる。しかし、16歳でも15歳でも感染した客と無防備にインターコースすると、感染してしまう。だから年は関係ない。敢えて主張するなら、慰安婦は非感染者であることがまず第一条件ということになる。ところが、性病感染は当時の売春婦の職業病だから、いずれは皆感染してしまう。ベテラン娼婦が不妊症なのは生殖器感染の結果であるというのが何よりの証拠だ。だから麻生軍医のこの主張はおかしい。共同便所の慰安所には慰安婦の年など関係ない。
戦場での集団レイプの特徴は被害者の年に関連性がないということなのだ。老いも若きも女性なら皆被害者になった。これは南京レイプでもコソボのエスニッククレンジングでも同じだ。
 
 
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もしも麻生軍医がかっての若き慰安婦達が年老いてこのように日本軍の非道を糾弾するのを予知していたら、慰安婦は若いコがええで、なんて書かなかったはずだ。