さて前回と前々回で麻生徹男軍医が軍上層部に充てた『花柳病ノ積極的予防法』の一部について私の感想を書きました。時は1939年、あの南京事件から一年後にあたります。当時の北シナ方面軍司令官は、岡村寧次大将、実際この人が日本軍慰安所制度の生みの親として認められています。この意見書、どのように慰安所強化に貢献したのか、知りたいところです。
『従軍慰安婦』1973年発行、では、著者の千田夏光が、麻生軍医がこの意見書で半島出身のほぼ未経験の慰安婦を強く推薦した事が朝鮮女性慰安婦の悲劇に導いたと述べています。もちろんこれに反して、麻生医師及びそのご一家は大反撃、今日に至っているわけです。
麻生軍医の医者として全く不適切な表現は文中でさらに続き、今日に至っても彼の言葉が日本バッシングに貢献しているのです。これはジョークではないのです。
❝某地ニテ検黴中ヨク見シ如キ猟鼠径部ニ横根手術ノ瘢痕ヲ有シ明ラカニ既往花柳ノ烙印ヲ押サレシ、アバズレ女ノ類ハ敢エテ一考ヲ与エタシ❞
性病検査で頻繁にみられるのは足の付け根のやや上部にリンパ種切開の傷跡である。疑いもなく過去に花柳病を患った証拠で、このようなあばずれ女の類は選出時に考え直すべきだ。
Chancoroid = 軟性下疳、に感染すると、悪寒、熱、尿痛がし、足の付け根のリンパ節が大きく腫れ、やがて破裂すると濃が出てくる。抗生物質のない当時はこれを早めに切開し、膿をだし、傷を洗浄したので傷跡が残る。娼婦の不妊はこのような下半身の感染症が原因であった。前にも指摘したように、性病は不特定多数の相手と予防手段無くインターコースを続けると、必ずかかる職業病であって、被害者がアバズレだから感染した、というものではない。軍慰安所では、コンドーム装着、性器洗浄をすることが規則だっので、この女性から感染する可能性は低く、他の慰安婦と同じであるはず。しかも、共同便所なら、どうして年が問題なのか?
❝此レ皇軍将兵ヘノ贈リ物トシテ実ニ如何ワシキ物ナレバナレバナリ。如何ニ検黴ヲ行ウトハ言エ❞
このような女は皇軍将兵への贈り物として実にふさわしくない、たとえ性病検査をパスしてもだ。
❝応戦地へ送リ込ム娼婦ハ内地最後ノ港湾ニ於テ十分ナル淘汰ヲ必要トス。マシテ内地ヲ喰イ詰メタガ如キ女ヲ戦地ヘ鞍換へサス如キハ、言語道断ノ沙汰ト言ウ可シ❞
日本を出る船に乗せる前に、事前にこういう食い詰め女を乗せるないようにする必要あり。内地で食い詰めた女を戦地へ鞍替えさせるのは言語同断の沙汰である。
上記の性病の被害者となった慰安婦を卑しめる侮蔑的表現に関しては、千田夏光は、これは麻生軍医が皇軍兵士として洗脳されていたからだ、とむしろ同情的に取っていました。医者か皇軍兵がどちらかは知りませんが、彼の皇軍将兵の贈り物、という言葉は、英語で、‟The Gift of Emperor” として慰安婦を指すユーフェミズムとなり、世界に拡散です。
‟A Gift of the Emperor” 1997 by Theresa Park はアマゾンでは読者に評判いいようです。
もっと深刻なのは、2015年、米国の高校の歴史教科書に、あの慰安婦は天皇からの贈り物、という言葉が使われたことです。最初は日本の外務省が発行元の教科書会社相手にネトウヨ慰安婦史に都合の悪い部分を改変するように要求したのですが、全く相手にされなかった。そこで、秦邦彦氏をはじめネトウヨ翼賛学者が19名、国家元首である天皇の名を冒涜するのは教科書にふさわしくない、と雁首そろえて教科書会社に抗議すると、米国の学者達が、慰安婦は被害者、自国の言い訳を目的とする歴史修正はやめるべきだと日本のネトウヨ学者を批判しかえすということになった。
天皇が国家元首だなどとは。一体いつ憲法は改正されたのだろう!?
なお、この教科書の慰安婦の記述には、ネトウヨ学者が見逃したもっと恐ろしいことが記載されていたのにもかかわらず。
それは従軍慰安婦制度の史的理由です。南京レイプで世界中に露見した日本軍の規律の乱れを何とかして抑える為と、非常に明確に述べられていました。このパートについては、強制連行はなかった、20万人は有り得ない、で必死の秦邦彦さんも全くスルーです。