今週8月3日の火曜日、NY州検事のレティシア・ジェームズはNY州知事アンドリュー・クォモに対するセクハラ容疑の調査結果を公表。結果はクロ。しかも真っクロ。
詳細なセクハラ描写に読者は唖然。バイデンをはじめ、民主党の多数も主要メディアも揃って辞任を薦め、さすがのクォモ知事も今や四面楚歌。
これには理由がある。クォモ知事がここで我を張って辞めないと、EEOC(=federal equal opportunity comission,連邦職場差別に関する部門)がNY州政府とクォモ知事を公民権法違反で起訴する事態もあり得る。職場での人種、年齢、性差別を禁止した1964年の公民権法違反となるからだ。
これは来年の中間選挙を控えたバイデン政権にとっては大打撃だ。民主党王国のNY州では、このままではクォモ知事を州議会で弾劾せざるを得なくなり、そうなると民主党が割れるのは必然。
この州検事の調査書は165ページもあり、ちょっとした本なみだ。セクハラ告発は今年の2月の末に被害者の一人、クォモ知事室で働く側近、がフェイスブックで暴露したのがバイラル化。"私一人ではない"、と彼女が書いた通り、他の2人が名乗り出て、大騒ぎに発展。
クォモ側はすべて通常の範囲内での言動とセクハラを全面的に否定。トランプオーガニゼーションの悪徳追及で名をあげたNY州検事のレティシア・ジェームズが乗り出し、その結果がこれである。
この調査書によると、被害者として11人が捜査対象となり、被害者を含めた関係者179名に事情聴収。その内41名から宣誓証言を取った。宣誓によりウソをつくと犯罪として偽証罪に問われる。宣誓証人のほとんどは州公務員であるからことは重大だ。この調査書には、ご丁寧に、被害者の証言、クォモ州知事の反論、州検事の見解が書かれている。事件は早くて2016に端を発し、お尻を撫でたり掴んだり、おっぱいを掴んだり、強引なキス等の身体接触は2018年からあの2020年のクォモ知事がコロナの陣頭指揮をしていた期間も続いてた、という驚きの事実の暴露。被害者女性達はほとんどがクォモ側近の州公務員となっている。
被害者の中で特に注目を引くのは、ある20歳代のNY州交通警察官のケース。この女性は2017年に州の記念行事でパトロールカーを運転し警備に加わってていたのだが、主賓であるクォモ知事の目にとまり、知事室から彼女の上役を通じて知事の警官側近に志願するよう要請された。
これは警官としては昇進の近道であるから、彼女は承知したのだが、経験3年という資格が設定されていた。しかし彼女は2年で資格に満たない。それを通知すると、なぜか経験2年に資格が変わった。これには彼女の上役も、この人の為にクォモがルールを変えた、とe-mailでコメント。
しかし採用後はお決まりのパターン通りのセクハラの連続。
職務でドアを開けた際に腰から臀部を触られ、エレベーターで知事の前に立っていた時には、手で腹から腿まで触られ、他の警官同僚の前で勝手に顔にキッスされた、等々の驚きのセクハラ。
それと、長年の公然パートナーと別れた知事は寂しいので彼女にガールフレンドを紹介してくれないか、その女性は痛みが好きな人がいいな、とか、ある時はこの20歳代の警官に、どうして結婚したいのかわからん、結婚するとセックスする気がなくなる、などの気持ち悪いコメントを次々と投げつけている。
クォモの公然のセクハラ言動でこの警察官とクォモの関係は仲間内でよく知られるようになった。しかし上役から、(告発すると)公式記録に残る、つまりキャリアに響く、とアドバイスされ、これも仕事の内と思い告発しなかったと述べている。
アンドリュー・クォモはNY政界のプリンスだった。父はNY知事を2期務めたマリオ・クォモ。弟はCNNのカリスマ・ニュース解説者、クリス・クォモ。この弟も弁護士だが、兄とは非常に近く、クォモの辞任問題について彼の番組では一言も触れなかった、と今批判の矢面に立たされている。
2005年に離婚したクォモ州知事の前妻は、ロバート・ケネディの娘で二人の間には娘3人がいる。離婚直後にセレブの料理研究家と公然の内縁関係となり、2019年に破局。この調査書ではセクハラはその直前から始まっているようなので、個人的出来事と関連があるのかも知れない。
去年はNY州のコロナ対策の英雄となり、トランプとやりあい、クォモの毎朝の記者会見の人気は凄かった。非難ゴウゴウのトランプとよく比較された。その頃にはバイデン後の大統領候補にまで挙げられた。
NYタイムズに寄せられたコメントの大多数は、クォモ州知事の言動はクリーピー(creepy=ぞっとする)で一線を越えている、今辞職するべきだ、と主張。しかしクォモ支持派は、トランプに比べればクォモのは独り身の寂しさから出たいちゃつきで、セクハラは告発側の勇み足、と釈明している。