6月28日の1/6下院調査委員による特別臨時公聴会で、メドウズ元首席補佐官(=官房長官)の補佐官だったのキャシディー・ハッチンソン嬢の証言が祝日連休前の米で大騒動を起こしている。ここ一週間彼女の証言が報道されない政治解説番組はない。
あのフォックスニュースですら、トランプは起訴される、と言い出す始末。
一方トランプは御大自ら、あの女には遭ったこともない、ファンタシーランドにいるアタマのいかれた人、と即反撃に出た。それだけトランプ側も衝撃を隠し切れない。
及川幸久はトランプ・ヨイショ動画で、ハッチンソン証言は論破された、とデマをまき散らしているが、事実は全くその逆だ。
トランプと及川がデマと指摘しているのは、トランプが防弾SUV車(通称ビースト)の中でシークレットサービスとちょっとしたもみ合いになったという部分。その時トランプ御一行の一員だったハッチンソン嬢は別車でウェストウィングに戻った。彼女のオフィスの向かい側は、大統領補佐官代理のトニーオルナト氏のオフィス。二人のオフィスはオーバルオフィスと呼ばれる大統領執務室を出た廊下の両側に位置し、突き当たりが首席補佐官のマイクメドウズのオフィスとなっていたと公聴会では説明されていた。
彼女がオフィスに戻った時、トニー・オルナト補佐官代理のドアが開いていて、内側からオルナト氏に呼ばれ、そこで信じられない話をきいた。そこにはトランプと一緒だったシークレットサービスのボビー・エンゲル氏もいた。
このオルナト氏は前はシークレットサービスの一員だったが、トランプ様のお引き立てで大統領補佐官代理まで昇進したという特異な経歴の人である。特異というのは大統領補佐官代理、つまりメドウズの#2は政治的任命の政府高官であり、大統領が交代すれば辞任することになっている。しかしトランプが退任した後、彼は再び古巣のシークレットサービスに戻っている。現在はトレーニングの職務だそうだ。ハッチンソン嬢は、その時エンゲル氏はオルナト大統領補佐官代理の話に一言も異論を唱えなかった、と証言した。
事実、トランプ自身もラリーで彼はあの時議事堂に行くつもりだったが、シークレットサービスに阻止された、と宣言していたのを、私も聴いた。
当然ながら彼女の証言が事実かどうか、SUVのドライバーとエンゲル氏の宣誓証言で明らかになる。しかし、これまでオルナト氏、エンゲル氏とドライバーが宣誓証言するという報道は全く出ていない。出ているのは、トランプの、ハッチンソン嬢は大ウソつき、という声。それに及川氏のハッチンソン嬢の証言は"論破された"というおかしな主張である。ハッチンソンのウソがシークレットサービス側の反論だとトランプ側メディアがいち早く報道したが、シークレットサービス代表の名は全く出ていない。むしろCNNによるとトランプともみ合ったという噂話が事件直後にシークレットサービスで賑わっていたという。
2022.6.30【米国】1月6日下院委員会 - YouTube
しかし、このハッチンソン証言はトランプ起訴に道を開いた、というのが法曹界の多数派意見となってきている。トランプが公衆の前で披露する過激発言は政治的意見の自由な発露として憲法で守られていることが認識されていたからだ。しかし、個人的会話は守られていない。逆にトランプの意図と悪意を裏ずけるという視点が今回前面に出てきた。
証言によると、トランプは事前集会の場で、メタル探知機の使用を止めろ、と命令した。これは彼の大統領としての立場を放棄し武装暴徒の反乱扇動の意図として見られるというのだ。
1/6調査委員会はずでにトランプ大統領の公式顧問弁護士だったパット・シポローネを喚問した。シポローネ弁護士はすでにトランプ側のクーデター計画を知っていてトランプを議事堂に行かせないようにした張本人である。ハッチンソン嬢にも、トランプが議事堂に行くと"私達"がありとあらゆる複数の犯罪で逮捕されることになる、と当日の朝も警告していた。この会話は大統領特権の枠外なのでシポローネは質問に答えなければならなくなった。
ハッチンソン嬢は一月2日にホワイトハウスにやってきたジュリアーニから、一月6日には物凄い事が起きる、と話された。ジュリアーニ氏は現在憲法5条の自己免責により証言を拒否。つまり法的に違法行為を認めた。シポローネ弁護士はメドウズにこのジュリアーニ一派をホワイトハウスに入れるなと警告を発していた。
しかしトランプはメドウズ首席補佐官に前日1月5日夕方にウィラードホテルに行け、つまり、ジュリアーニ一派と打ち合わせしろ、と命令したのだが、メドウズ氏は側近の反対でついに断念した、とハッチンソンは証言。これなどはクーデターの首謀者はトランプだったということを示唆している。メドウズは証言拒否で委員会から犯罪容疑者として司法省に起訴を要求されているが、司法省はいまだに起訴に踏み切っていない。しかい、彼は調査委員会に全面協力し、要求された文書、e-mail等の半分を引き渡したが、トランプの介入で突然拒否に回った。
不正選挙を暴くと訴え選挙直後トランプは一挙に寄付金約22億円を集めたのだが、その一部がつい2週間前までハッチンソンに付けられたトランプ側弁護士に払われていた。しかし彼女は弁護士を替え、今回の証言ができたと報道されている。弁護士費用はフツーの人にはとても払えそうもないのが現実というもの。当然ハッチンソン嬢のようにトランプ側の喚問証人にはトランプからの金が出回っている。
それからこの証言の直前にハッチンソン嬢の受け取った脅迫メールが公聴会で読み上げられた。
XXXはオマエを見守っている、証言内容も全部読んでるぞ、言われた通りに正しい事をすればいい、とかなり怖い内容。伏字のXXXはメドウズという憶測が流れているが、これで脅迫状を構成するそうだ。差出人のトランプ関係者の名はすでに割れている。
私はこの先トランプは起訴されると予想している者の一人です。しかし司法省が起訴に踏み切らなければトランプが大統領に返り咲く可能性が高い。そうなると米は歴史の進歩に逆行する愚衆国に成り下がることは間違いない。トランプ起訴に批判的な裁判弁護士達もこれだけは一致している。