chuka's diary

万国の本の虫よ、団結せよ!

F/U:タッカーカールソンのデマ、エップスはFBI!?

前回のF/U、フォローアップ、です。レイエップス(=Ray Epps) はFBIの手先として議事堂襲撃を扇動したとカールソンの人気番組で全米に宣伝された。カールソンは少なくとも20回に渡りエップス氏を糾弾。

タッカーカールソンは、私をどうにかしてやっつけたいという執念に凝り固まっている、とエップス氏。

 

今年の3月、エップス氏と彼の弁護士はフォックスとタッカーカールソンに宛て公開状を送り付けた。この目的は上記の両者に謝罪を求め、来るべき訴訟の為に関連書類の保存の要求だった。

事実はエップス氏がFBIの手先でも情報提供者でもないことは明白だった。証拠は下院1/6調査委員会が録った弁護士同席のエップス氏による宣誓供述書である。

 

エップス氏は襲撃事件直後にFBIに真っ先に指名手配されのだが、実際の事情聴収は事件から数か月後。彼は起訴されなかった。

ところが彼がFBIが送り込んだ扇動者だというデマがトランプカルト内で拡散され、下院調査委員会はエップス氏を召喚。その結果がこの供述書で全97ページ。これには彼が1/6に参加するいきさつからアリゾナへの帰還までの詳細が書かれている。去年2022年の12月に公開され、オンラインで誰でも閲覧可能です。この約3時間に渡る質疑応答でエップス氏はFBIとの関係を繰り返し尋ねられたがその都度きっぱり否定。

 

歴史に興味がある人におもしろいのは、彼はアリゾナ生まれのアリゾナ育ち、いわばアリゾナ人だが、エップスはいわずと知れたバージニア州の名家に由来していることだ(そうだ)。ご先祖さまをたどれば、英王から独立前の植民地バージニアに広大な領地を拝領していたことがこの家のそもそもの始まりだった。以来代々そこで広大なプランテーションを経営していた。当然奴隷農場です。南北戦争時の当主は南軍総指揮官リーの下で軍人として闘ったが、豪壮なエップス屋敷は北軍司令官グラント将軍に占拠され彼の司令部として使われた、という数奇な運命の一家だ。

 

この祖先の歴史が念頭にあり彼自身も父につれられ若い頃祖先の地バージニアを訪れた思い出も手伝って、2021年のしょっぱなに、この際だというわけで一族の過去も訪ねる抗議集会ツアーをしてしまったとのこと。このツアーには、ユタから彼の息子と息子の友人も参加。まず襲撃前日の早朝に主都ワシントンに到着合流、その日はたっぷり先祖さまゆかりのバージニアをレンタカーでツアー。

 

日本には米建国と言えば清教徒とアタマから思い込んでしまっている人がほとんどだが、米の歴史は何といっても植民地バージニアから始まった。バージニアの田舎には植民地時代からの古民家や史跡がまだまだあちこちに残っています。またバージニアは西はアパラチア山脈で森を抜け丘を越え湿地帯をくぐるとそこは広大な大西洋。今も取り残された自然が残っている素晴らしい州です。

 

それでエップ氏3人一行がDCに帰りついたのは夕方。まるで襲撃前夜祭だった(エップス氏証言)。そこで偶然エップス氏はあのYouTubeのトランプカルト・トランプインフルエンサー、"ベイクドアラスカ"氏に遭遇。"ベイクドアラスカ"とはアイスクリームデザートのことで仮名です。その時も暴力はいけない、とこの男に説教し、喧嘩になった。このベイクドアラスカ氏は1/6で起訴され罪を認め軽犯罪で4カ月禁固の判決を下された。

 

"You need to GO INTO the Capitol!"

上がエップス氏のキーワード。彼は、皆で議事堂内の玄関広間に結集し意見をはっきりさせなければならない、と信じた。だが取りようによっては意味が大きく違ってくる。前夜の集会ではトランプ支持者達から過激行為を扇動していると反感を買い、周囲からFed!(FBI)と囃された。これは事件後に動画がトランプカルトから繰り返し流され、FBIの手先説の原因となった。

 

翌日の1/6はトランプの演説を聴こうとホワイトハウスの広場に午前6時前に一番乗り。しかし、トランプの演説を聞かずに、議事堂へ。理由は座って演説を聴くには寒すぎたのと、暴徒の先頭に立ってすべてを目撃したかった、という。

 

海兵隊だった私は後方にじっといることはできない、やはり先頭に立たなければ、との勇ましいお言葉です。兎に角議事堂内へ、というのも、"議事堂は市民の家"だから、週日は一般公開されていた、と思っていた。だが、暴徒ぶりを目撃し失望した。しかし彼が議事堂内に入ろうとした時、突然助を求める声が耳に入った。地上に倒れている男を発見。この男はテンカン発作でほぼ失神。彼を安全な地点に連れて行き回復を見守った。その後、そのまま宿舎のホテルに帰った。彼の息子と友人もほどなくしてホテルに帰ってきた。

 

翌日は、3人で一日首都見物。そして8日にアリゾナに帰宅すると、すでにオンラインで指名手配されていた。その日のうちにFBIに連絡した。基本的にはエップス氏と息子・知人の3人は不法侵入(=軽犯罪で、最高一年の禁固)に該当するが、(それぞれが動画に映っている)、FBIに事情聴収後3人ともども起訴されなかった。

 

これは私の憶測だが、起訴されなかったのは、彼が初犯であること、3人共それまで警察とも問題を起こさずむしろ善き市民であったこと、それとエップス氏がテンカン発作の人を救助したこと、が理由だろう。緊急で人を救助するということもなかなかできることではないのだ。

 

これまでの捜査ではエップス氏が議事堂の中へ行け、といったのでそうした、という人は出ていない。前述のベイクドアラスカ氏はエップス氏については言及なし。エップスしがバリケードを前に何やら耳打ちした男は、近くにいた民兵組織プラウドボーイズのメンバーから直接指示を受けたと述べた。しかし、エップス氏と息子は、1/6の前夜に、Fed!(FBIの手先)と囃された事を全く覚えていないと証言している。これはSelective Memory(記憶の選別結果) の典型だ。

エップス氏のケータイに入っていた交信はFBIや警察関係者でなかった事が捜査で確認された。